高速増殖炉原型炉「もんじゅ」の廃炉が昨年末、決まった。稼働から22年、事故や不祥事が相次いだ。 発電しながら消費した以上の燃料を生み出す「夢の原子炉」と期待されたが、稼働したのはたったの250日。 近年では点検漏れが頻発。現場は再生に向けて努力を続けてきたが、その思いがかなうことはなかった。

[高速増殖原型炉もんじゅ所長]青砥紀身氏
(写真=北山 宏一)
(写真=北山 宏一)
1954年生まれ。84年、東京大学工学部原子力工学科修了後、動力炉・核燃料開発事業団(現日本原子力研究開発機構)に入社。同機構次世代原子力システム研究開発部門長などを経て2014年10月から現職。15年4月、理事に就任。
もんじゅ廃炉の概要
発電しながら使った以上の燃料を生み出す高速増殖炉原型炉の「もんじゅ」(福井県敦賀市)。国立研究開発法人の日本原子力研究開発機構が運営する。建設、運営費に1兆円を投じたものの事故や点検漏れなどの不祥事が相次ぎ、稼働日数は22年間でわずか250日にとどまった。2016年12月、政府はもんじゅの廃炉を正式に決定した。
<b>福井県敦賀市にある高速増殖炉原型炉のもんじゅ。2010年に運転を停止して以来、再稼働に対する地元の期待もあったが、廃炉が決まった</b>(写真=共同通信)
福井県敦賀市にある高速増殖炉原型炉のもんじゅ。2010年に運転を停止して以来、再稼働に対する地元の期待もあったが、廃炉が決まった(写真=共同通信)

 昨年12月、高速増殖炉原型炉もんじゅの廃炉が正式に決まりました。所長のミッションは当然ながら「もんじゅ再生」でした。2010年8月の事故以来、運転を停止した状態でしたから。

 ですが、最終的にそれが成し遂げられなかった。そのふがいなさには自分自身、腹が立ちます。廃炉は断腸の思いで、残念としかいいようがありません。廃炉決定からしばらく時間はたちましたが、当時から私のこの思いは変わっていません。

 日ごろから懇意にしていただき、もんじゅの再稼働を期待してくださった地元の方々、特に福井県敦賀市白木地区周辺の方々には大変、申し訳ないと思っています。

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