震災による津波で壊滅的な被害を受けた宮城県の水産業。名産品の養殖ホヤもその一つだった。 復活に向け努力を続けてきたが2013年、韓国の禁輸措置が実施され苦境に。 新商品の開発などで国内販売は伸ばしたが、最終的に7600トンが販売できず処分する事態に陥った。
[宮城県漁業協同組合理事]阿部 誠氏
1956年生まれ。千葉県にある全国漁業協同組合学校を卒業後、76年、宮城県信用漁業協同組合連合会(2007年、宮城県漁業協同組合に吸収合併)に入社。2013年から経済事業本部長、2014年7月から現職。
宮城県産ホヤ、大量処分の概要
宮城県は全国有数の養殖ホヤの産地。キムチの具材として人気があり、生産量の7~8割が韓国に輸出されていた。だが2013年9月、東京電力福島第1原発事故による汚染水流出問題を受けて、韓国が宮城や岩手、福島、茨城など8県の水産物に対して輸入を全面的に禁止した。その影響から生産過剰となり、7600トンのホヤの廃棄を余儀なくされた。
<b>昨年6月から、生産過剰となった宮城県産のホヤの処分が産地の女川町などで始まった。漁業者が水揚げしたホヤは冷凍保管されたのち県外に運ばれ焼却処分された</b>(写真=読売新聞/アフロ)
昨年6月から、生産過剰となった宮城県産のホヤの処分が産地の女川町などで始まった。漁業者が水揚げしたホヤは冷凍保管されたのち県外に運ばれ焼却処分された(写真=読売新聞/アフロ)

 東日本大震災から間もなく6年になろうとしています。津波によって宮城県の漁業は壊滅的な被害を受けました。ですが、漁業者をはじめ関係者の方々と復興に努めてきました。ホヤの養殖はその象徴的存在でもありました。

 宮城県は全国有数のホヤの産地です。石巻市の牡鹿半島や女川町、南三陸町などで養殖され、国や県の復興補助事業などを活用しながら再度、量産に努めてきました。その結果、年間1万トンを生産できるレベルにまで復活することができました。

 ところが昨年、そのホヤを大量に廃棄しなければならない事態に追い込まれました。震災の大きな被害から立ち直り、漁業者がホヤ養殖の復興のために努力をしてきた。手塩にかけてここまで育ててきた名産品を捨てなければいけない。本当に苦渋の決断でした。

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