小田原市の職員が生活保護世帯への批判と取れる内容のジャンパーを着ていたことが分かった。 その後の調査では、ジャンパー以外にもマグカップなど多数のグッズ作製も明らかになった。 事態を重く見た市役所は、原因究明を急ぎ再発防止を誓う。
[小田原市福祉健康部長]日比谷正人氏
1979年小田原市役所入庁。生活保護関連の業務を行う福祉健康部次長を2011年まで務める。11年4月に小田原競輪を管轄する公営事業部部長に就任。11年4月に子ども青少年部部長を経て、16年4月から現職。
小田原ジャンパー騒動の概要
1月に報道機関からの指摘で「HOGO NAMENNA(保護なめんな)」や「悪」にバツ印などが書かれたジャンパーを小田原市の職員が着用し、生活保護世帯へ訪問していることが発覚した。もともとは職員の士気を上げるために有志が自費で作製したものだったが、内容が生活保護世帯への批判として取れることから市が謝罪するに至った。

 小田原市の福祉健康部・生活支援課は、ケースワーカーと呼ばれる市の職員が生活保護の申請を受け付けたり、生活保護世帯のサポートをしたりする部署です。ここに1月16日、報道機関から問い合わせがありました。所属する職員が、生活保護世帯を批判するような内容が書かれたジャンパーを着用して生活保護世帯を訪問しているのではないかというものでした。

 すぐに調べましたところ事実でした。即日、職員には着用することを禁じました。翌日17日には新聞やテレビで大きく報道されまして、その後には一般の方からのお問い合わせやお叱りのお電話も2300件もありました。

 反響の大きさを感じるとともに、このジャンパーを着用した職員の訪問で気分を害された方々には、大変申し訳ないと思っています。今回、市内の全生活保護世帯へは、謝罪文を発送いたしました。

 職員への聞き取りによると、ジャンパーは職員がすべて自費で作製して着用していたものでした。その前面は「HOGO NAMENNA(保護なめんな)」というローマ字表記、「悪」という漢字とその上にバツ印が書かれたデザインになっていました。背面には「生活(S)保護(H)悪(A)撲滅チーム(T)」の頭文字をとった「SHAT」というロゴと「私たちはあえて言おう。不正受給をするような人はカスであると」と読めるような英文が書いてありました。

 調査結果を申しますと、「HOGO NAMENNA」は、市役所内の他部署や不正受給をしようとする人に対して生活保護課の業務を甘く見るな、という意味だったようです。悪の上のバツ印も、実はバツ印ではなく、相手を捕まえる際に使う「さすまた」2本をクロスさせたデザインでした。「SHAT」や「カスであると」という表現とともに不正受給を許さないという意味だったことが分かりました。

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