「電話番号を教えてはいけない」

 再発防止のため、協会では事件後にコンプライアンス研修を開きました。

 警視庁は現在、2020年の東京五輪に向けた対策室を設けています。目的の一つは、選手が変な勢力からアプローチを受けるのを防ぐことです。

 そこで、この対策室に依頼して専門家から、代表選手やスタッフに講義をしてもらいました。暴力団や麻薬、サイバー犯罪などの専門家が、実例を交えて話をしてくれるのです。

 例えば暴力団などの反社会的勢力にとって、選手は資金源になり得ます。最初は「ファンなので写真を撮らせてください」と近づいて、「お食事でも」と誘ってくる。甘い言葉に乗ると、最後に「実は私はコレでして」と脅してくる。脅迫に屈して一度でもお金を払えば、ずっとつけ込まれる。こんな例を多数教えてもらいました。

 選手たちは、真っすぐで善意的な人が多いんです。だからファンだと言って近づいてくると、自然と「ありがとうございます」と対応してしまいます。けれど、そこでつまずくこともある。研修では、「見ず知らずの人に電話番号を教えてはダメだよ」といった基本的なことからしっかりと教えました。まず代表選手らから研修を始めましたが、今後はジュニア選手にも広げます。

 桃田君は世界ランキング2位まで上り詰め、今回のリオ五輪でもメダル候補とされた選手でした。そんな彼が五輪を諦めなくてはならないのだから、払った代償は極めて大きい。

 桃田君は現在21歳。年齢的にはまだチャンスがあります。だからこそ、まずは今回の事件を真摯に反省してもらいたいですね。協会としてはリオ五輪が終わった後で、彼の更正プログラムを検討し、東京五輪を目指せるような道筋を模索したいと考えています。

 同時に、選手の人間力や人格力を高める教育に、今以上に力を注いでいきたいと思っています。