海外で覚えたカジノの楽しみ
なぜこんな事件が起こったのか。再発防止に向けて色々と考えました。
バドミントンでは、年に20回くらい国際大会に出場しないと世界ランキングが上がらず、五輪の出場権が得られません。国際大会では朝からひどい時は深夜の1時、2時まで試合が続きます。
日本代表だけでも男女合わせると30~40人の選手が試合に出ますから、監督やコーチは、どうしても出場する全ての選手に目を配ることが難しくなります。その結果、選手によっては昼食や夕食がフリーになるのです。
そこで協会では5~6年前から、所属チームの監督やコーチにも遠征に帯同してもらうようにしました。責任逃れでも何でもなく、選手にとってもその方が安心できるからです。
ただ、そうした状況の中で田児君はカジノに行くようになったようです。試合の空き時間なのか、試合に負けた後なのかは分からないけれど、取っ掛かりは外国のカジノだったようです。
日本代表の朴柱奉ヘッドコーチは、田児君が遠征時にカジノに行っていたことを知っていたようで、過去に何度も注意をしたそうです。「もっと試合に集中しろ。賭けごとはするな」と。
けれどそれでも止められず、ついには国内の違法カジノ店で賭博行為に手を出すようになってしまった。
選手たちは実業団チームの練習の後、仲間同士で飲食をしてから違法カジノ店に行ったようです。
協会では、1年のうちおよそ250日の間、代表選手らを国際大会や合宿などの公式行事で束縛します。けれど、それ以外の100日のうちの、ましてや練習に充てるおよそ50日間まで行動を監視することはできません。責任逃れをするつもりは一切ありませんが、選手のプライベートまでは、なかなか管理しきれないというのが実情です。
とはいえ、彼らは日本を代表するトップアスリートで、社会的な影響力はとても大きい。スポーツ庁やJOCなどから補助金を受けて、それを遠征費用の一部に充てていることを考えると、道義的な責任もあります。
協会では今回の事件を受け、日本代表選手らに次のように話しました。
「君たちは常に背中に“ジャパン”を背負っている。これはプライベートがあってないようなもので、非常に厳しいかもしれない。けれどトッププレーヤーがメダルを目指すということはこういうことなんだ」「365日、日本代表選手の自覚を持っておかないと絶対にダメだ。休日だから何をしていてもいいというわけじゃない」
特に最近はバドミントン選手のメディア露出が増え、芸能人のように見られるようになりました。日本のバドミントンのレベルが上がり、メダルを取れる種目になってきたためでしょう。それに貢献したのが田児君や桃田君であり、女子選手なら奥原(希望)さんたちです。「オグシオブーム」の影響もあって、バドミントン界への注目度は格段に高まっています。けれど、選手らの意識改革が追いつかなかった。

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