時に時勢に見放され、時に敵襲に遭い、時に身内に裏切られる――。栄華興隆から一転して敗戦に直面したリーダーが、おのれの敗因と向き合って問わず語りする連載「敗軍の将、兵を語る」を、「日経ビジネス」(有料)では原則毎号掲載しています。連載の魅力を知っていただくために、2018年3月の月曜から金曜まで、過去2年間に登場した「敗軍の将」たちの声を無料記事として転載・公開します。

(日経ビジネス2017年5月1日号より転載)

 軽自動車を専門に約34%の車検業務を担う軽自動車検査協会。昨年11月、複数の車検場の検査基準値が人為的に緩く設定されていたことが発覚。細かい検査結果を残しておらず、134万台が再検査の対象となる事態に。

[軽自動車検査協会理事]
大髙豪太氏

1966年生まれ。89年、東京大学農学部卒業後、運輸省(現国土交通省)に入省。観光庁国際観光政策課長、鉄道建設・運輸施設整備支援機構総務部長、国土交通省総合政策局国際政策課長などを歴任し、2016年10月から現職。

SUMMARY

判定値設定ミスの概要

昨年11月18日、軽自動車検査協会が軽自動車の車検に使う機器で、検査基準値の設定ミスが発覚。89カ所ある車検場の内、10カ所16検査コースで検査機の判定値が基準より緩い間違った値で設定されていた。さらに過去、16カ所21検査コースで設定ミスがあったことも判明。実際には不適合ながら適合と判定した車両は合計1800台に上ると推定。

3000万台を突破
●軽自動車の保有車両数の推移

 軽自動車検査協会は軽自動車を専門に車検業務を手掛ける民間法人です。軽自動車は経済性、実用性が高いことから年々、保有車両数が増えています。2015年には3000万台を超え、軽自動車の比率は全自動車の約4割に相当します。それに伴って検査協会の事務所(車検場)も全国的に拡大して現在、89カ所を設置しています。

 車検の目的は第一に安全性の確保です。「公正かつ確実な検査」が検査協会のモットーです。

 ですが昨年11月、肝心の検査機器の基準値で設定不備があることが判明しました。緩い基準で検査をしてしまいました。間違った基準値で車検に合格したのは約134万台、その内、実際には不適合の測定値ながら適合と判定した車両は約1800台と推定しています。

 検査不備は安全性に影響が出ますから、重大な過失だと受け止めています。この車検を受けたクルマの所有者の方々、クルマを持ち込んでこの車検を受けた認証整備工場の関係者には多大なるご迷惑をおかけしました。軽自動車の車検に対する信頼を失ったことを深くおわび申し上げます。

 基準値の設定ミスが発覚したのは、独立行政法人自動車技術総合機構が実施している普通車の車検で判定値の不備があったことが契機でした。国土交通省より軽自動車検査協会に対して調査指示が出ました。

 その結果、89カ所ある車検場の内、10カ所16検査コースで検査機の判定値が基準より緩い間違った値で設定されていたことが分かりました。調査を進めると、調査時点では正しい値になっていたものの、16カ所21検査コースで過去に設定不備があったことも判明。車検は最初の新規検査で有効期限が3年間、継続検査で2年間ですから、過去3年分を調査したのです。

 間違った基準値で検査をした車両数は事務所別にみると茨城事務所が約15万台、大阪府の高槻支所と茨城県の土浦支所が約13万台、神奈川事務所が約11万台などでした。地域に偏らず全国的に検査ミスがありました。調査報告を受け、これだけ大きな規模の検査不備があったことは想像以上でした。