車に近寄る不審人物

 騒動で店舗全体の信用が落ち、お客様が来なくなることが一番怖かったです。またパチンコホールは行政から許可を得て営業させていただいているので、最悪の事態となれば、お店の営業停止とか、そういった部分にまで至るのではというのが頭をよぎりました。

 2回目の調査の結果、店長が不正行為を行っていた疑いが強まりました。不正行為とは、出やすい設定のスロットマシンを自分が募集した人に遊技させ、利益を折半するものです。いわゆる「サクラ」です。

 匿名で届いたLINEの画像には、どのスロットマシンが出やすく設定されているか、それを打って利益が出た場合は、利益の半分を駐車場のある車の中に入れるという内容がありました。

 該当する日の駐車場の監視カメラを見ると、その車に近寄って何かをしている人物がいました。次に店内の監視カメラのデータや遊技データを出して、その人物が店内でどの台をどう遊技していたかを調べました。

 すると該当台には、その日の朝は「故障台」など遊技できないことを示す張り紙があり、その人物が来店すると同時に店長がその張り紙をはがし遊技を始めさせたことが判明しました。同一人物が同じように台を遊技したり、車に近寄ったりというのが別の日にもありました。期間をさかのぼったり、別の人物に注目して調査したりすればもっと出てくるかもしれません。

 すぐに店長を出勤停止にしました。またツイッターの投稿についてもネット上で拡散が止まらず、炎上していましたので、2月4日にホームページ上で調査をしていることとおわびを掲載しました。

 会社からの聞き取りに店長は否認を続けていました。LINEに関しても、自分のアカウントが何者かによって乗っ取られて書き込まれたもので、自分は関知していないという説明でした。また、乗っ取られて調子が悪かったという理由で、LINEを利用していたスマートフォンはすでに機種変更し、データは一切残っていないと主張しました。

 協議の結果、会社の風紀を著しく乱したなどの理由により懲戒解雇とし、その内容を2月8日にホームページ上で公開しました。

 会社のお金を不正で得ているならば、横領や背任で懲戒解雇にしたかもしれませんが、スロットマシンの仕組み上その行為を明確に証明することは難しい状況でした。というのも、スロットマシンの設定は変更しても履歴が残らないものが大半だからです。会社のデータベースには設定履歴を記録していますが、仮にデータベースに設定2とし、実際の台には最高設定の6としても証拠は残らないわけです。これは業界全体の課題だと思っています。

1日数百本の抗議電話

 ホームページ上で公開した日から、本社や該当店舗には1日数百本の抗議の電話やメールをいただきました。「やっぱりサクラをしていたのか」や「不正行為を行った人をしっかり処分してほしい」といった内容が多かったです。

 並行して、様々な影響も出てきました。お客様が自分のパチンコ玉やメダルを景品に換えずにためておく「貯玉」という仕組みがあります。この貯玉が一斉に引き出されました。貯玉の額が増える日も減る日もありますが、全体で多くて1日数十万円ほどです。ところがこの時期は数日で500万円に相当する貯玉が減りました。失望したお客様が一気に引き出されたのだと思います。

 さらに取引のある銀行から聞き取りをされました。該当店舗が営業できなくなるようなことが起こるのか、なぜこういうことになったのかを聞かれました。この銀行からは新規店舗出店の資金を借りる予定でしたが、様子を見たいということで融資はいったん中止になりました。新卒採用を予定していた学生の方のご両親からも心配だとの連絡をいただいたこともありました。あらためて会社の存続を揺るがす大きな事態だということを認識しました。

 このようなことは二度と起こってはいけません。現在は再発防止策を施しているところです。例えば今回の問題になった設定に関しては、別の人物がダブルチェックを行う、定期的に第三者が店舗を訪れて、申告内容と実際の設定に違いがないか監査するということを始めています。

 社員に対しても状況説明やセキュリティー監査について説明するとともに、二度とこのようなことが起こらないように私も含めて社員に徹底しているところです。