輸入禁止は青天のへきれき

 1975年に「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約」が発効しました。いわゆるワシントン条約です。そのときはアフリカゾウは対象ではありませんでした。日本は80年にワシントン条約に加盟し、それ以降、輸入に対する規制は徐々に厳しくなりました。ワシントン条約においてもアフリカゾウが対象となり、分類もより規制が強いグループへと移行していきました。

 そして89年、アフリカゾウを保護する観点から象牙の商業目的での国際取引の全面禁止がワシントン条約で決まりました。これは当時、本当に青天のへきれきでした。規制は厳しくなるでしょうけれど、象牙の輸入はしばらくできるものと考えていたからです。

 南アフリカ、ジンバブエ、ナミビア、ボツワナの南部アフリカにある4カ国ではアフリカゾウの頭数が増えているという報告も聞きましたから。全面的に禁止になるとまでは思わなかったのです。

 実際、これらの国からは99年と2009年の2回、それぞれ50トンと39トンがワシントン条約の締約国会議の決定に従って例外的に、日本に輸入されました。目先、数年分の象牙しかなく、カツカツの状態でなんとか耐える。少量が輸入されしばらくしのげるようになる。そうした状況が続きました。

 一方、動物保護団体などが象牙取引に反対し、不買運動などを展開する影響で需要は年々、減っています。そのため皮肉なことに、在庫が完全に枯渇することなく今に至っています。

 ただ、百貨店や大手スーパー、ネット通販などに対する保護団体の批判の声は強まるばかり。小売業界がこうした批判の声に屈して、象牙を扱わない決断を下すことになれば、私たちにとっては死活問題になります。

 日本象牙美術工芸組合連合会に加盟しているのは33社です。合計の年間売上高は40億円程度です。ほとんどの会社が象牙を専業にしていますので、影響は深刻なのです。

 私の会社(大熊象牙製作所)でも象牙の代替品を考えたことはあります。例えば水牛の角です。ですが、水牛の角を扱う専門店は既にありますから、新たに参入するには値段で勝負するしかない。そうなれば当然、利益は上がらなくなります。苦労して参入する意味がないのです。

 プラスチック樹脂での代替も考えられますが、象牙の方が欠けづらいなど、素材としての魅力は高い。結局、象牙専業のまま続けるしかない状況です。