塾長選不思議な仕組み

 慶応義塾大学の塾長選挙は1964年から現行の制度になった。選考過程は大きく4つに分かれており、大学の学部や職員などから推薦された候補者最大24人が、教職員450人による2回の投票で3人に絞り込まれる。3人の候補者から1人を選ぶのは「選考委員会」だ。この委員会は評議員や元学部長、元塾長ら29人で構成。評議員には大手企業の経営者も名を連ねる。選考委員会が推薦した1人を、慶応義塾大学の最高議決機関である「評議員会」が承認し、塾長を選任する。

就任会見に臨む長谷山新塾長(左)と清家前塾長(写真=共同通信)

 現行の選挙制度が始まってから約50年、選考委員会が推薦する候補者は、教職員による投票で得票数が1位の者が選ばれていた。

 ただ得票数や順位が公になるようになったのは2013年の選挙からだ。それまでは公表されていなかったが、「なんとなく得票数や順位が分かって、2位以下の人は辞退していた。ルーズなシステムだが、トップの人を出すという知恵と良識があった」(同大学関係者)。

 こうした数字が公になるようになったきっかけは、10年に当時の清家篤塾長を筆頭とする常任理事会が作成した指針だ。本誌が入手した「今日の慶応義塾におけるガバナンスのあり方」と題された資料にはこう明記されている。

従来は最多得票者が塾長に
●歴代の慶応塾長

 「塾長候補者選考委員会も、選考にあたり、教学部門が行った選挙の結果をそのまま尊重するのが原則とされるべきこと」「このような考え方は、これまでの慶応義塾における塾長選出の慣行を確認するものにすぎない」

 これまで明文化されていなかった慣行にお墨付きをつけた形で、この資料は11年に評議員会で配布された。しかし、大手企業経営者らが参加した選考委員会では、この指針は生かされなかった。さらに清家前塾長は、長谷山彰新塾長の就任会見で「得票数は、選考委員会が選ぶ際の一つの参考資料」と発言し、自らが作成した指針を否定している。