一方、もやしの原料である緑豆の価格は03年から上昇傾向にあります。緑豆はほとんどが中国からの輸入です。日本で栽培されない理由は気候が合わないことです。緑豆は収穫期に雨が降ると豆のさやにカビが生えるなどして出荷できなくなります。収穫期は9月で日本は台風など雨の多い時期です。中国でも吉林省など特定の産地に限られています。

 中国では安価な人件費で生産していますので、仮に気候の問題をクリアしても日本での生産は採算性を考えると難しいでしょう。実際、緑豆からの完全な国産もやしを目指した事業者もありましたが、成功していません。

 中国産の緑豆が高騰している理由はいくつかあります。1つ目はトウモロコシなどより収益性の高い作物へ現地の生産者が転作していること、2つ目は人件費の高騰、3つ目は天候不順で収穫期に降雨があったことによる不作です。価格は17年2月時点で1トン当たり約27万5000円と03年の4倍以上になりました。

 納品価格が低いのに原料価格が高騰すれば当然、収益を圧迫します。もやしは装置産業ですから固定費はどうしても圧縮できない。そのため多くの事業者がもやし生産で赤字に陥っています。私が社長を務める旭物産でも実はもやし生産は赤字です。カット野菜の生産も手掛けておりそちらは黒字でなんとか全体のバランスを取っていますが、非常に厳しい状況なのです。

 スーパーやドラッグストアなどの小売店では1袋200gで販売するのが一般的です。1袋30円を割り込むようになった背景には、スーパーやドラッグストアの安売り競争があります。もともと、単価が安く、販売数が多い人気商品ですので特売の目玉にしやすい。中には生産者からの納品価格を下回る値段で販売するケースも多くあります。もやし販売で損をしても、集客につながれば小売店全体としてはメリットがあるわけです。

 私たちとしては一定の納品価格さえ維持できれば、小売店が赤字覚悟で値下げすること自体はリスクにはならないという考え方もあります。スーパーが損をして売ってくれていることは、ある意味、生産者にとってはありがたいことともいえます。安く売るから大きな販売量が確保できるわけですから。逆に正常な価格になってしまったら、売れなくなるリスクもある。

 そうは言っても、やはり安売りが続くと、例えば「もやしは19円なんだ」「安い商品なんだ」というイメージが消費者に定着してしまいます。そのことを一番、恐れています。

1袋9円で廉売する店も

 過去には1袋9円で販売した小売業者もありました。それに対して協会として警告文を出しました。「この値段で販売を続けると不当廉売に当たる。公正取引委員会に報告します」と。この時はさすがに値段を変えてくれました。ですが、変えなかった事例もあります。公取が調査に入ることを察知して、その時は値段を上げましたが、しばらくして元に戻されてしまいました。

原料価格が4倍以上に高騰
●もやしの原料価格と小売価格の推移
原料価格が4倍以上に高騰<br /><small>●もやしの原料価格と小売価格の推移</small>
注:工業組合もやし生産者協会調べ。原料価格は貿易統計(財務省)の中国産緑豆価格(2017年は2月まで)、小売価格は家計調査(総務省)から抜粋(16年まで)
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 原料価格が高騰している現状では小売価格で1袋40円程度、納品価格は25~30円が適正だと考えています。店頭での過度な安売りをやめ、適正価格での取引をお願いするため、小売店の関係者に14年12月と今年3月の2回にわたって声明文を送りました。今年の声明文では「もやし生産者は体力を消耗しきっており、これ以上の経費削減への努力は既に限界を超え、健全な経営ができない状況です」と訴えました。主に取引会社の社長宛てで500枚、各社の社長から仕入れ担当者に通知されているところまで確認しています。