一般的に船の事業は大きく3種類に分かれています。外国を航行する外航、国内を航行する内航、そして我々がやっているような定期船フェリーです。中でも内航の船員が足りません。需要があっても船員が足りないことが理由で仕事を受けられない状態だと聞いています。我々よりも運航で得られる収入は大きいから、彼らは船員をフェリー業界よりも高い賃金を提示して引き抜いていきます。聞くところによると、1.5倍ほどの差があるようです。

 それに対し、フェリー業界は待遇を上げづらい環境にあります。私どもは運航に関わる費用として補助金を頂いておりません。となれば、待遇を改善するには運賃を上げざるを得なくなります。地域住民の皆様にご迷惑をおかけするだけでなく需要が減ってしまう恐れがあります。

 実は、需要も厳しい状態が続いています。草壁港の周辺はしょうゆやつくだ煮が基幹産業としてありますが、つくだ煮は年々減少傾向にあり、活気を取り戻すには時間がかかりそうです。さらに高校を卒業する若者のうち年間200人ほどが離島します。

 需要を増やすために中長期の視点で考えれば産業振興が欠かせません。短期的には観光需要の取り込みが重要です。小豆島はいま外国人観光客を中心に人気が高まっています。世界的に有名になった直島が近くにあることもあり、寄っていただけています。人気を保っている間に、船着き場を中心に栄えないといけない。

 今回の決断までに私が着任してから社内の改革を進めてきました。フェリーは長らく地域住民の方々の足としてやってきたがゆえに、サービス業としての視点が欠けていたのです。我々の船着き場は鉄道に例えれば駅です。駅が栄えれば街も活気づきます。

 社員に意識改革を促すために小さなことでも、まずできることから手をつけていきました。例えば、以前はお客様に背を向けて座っていた事務員の机を、お客様の方に向けるところから始めました。ようやく最近になって社内が改革に向けて動き出したと言える状況になりました。今回の運休によって「社長は本気で社内を改革する気だ」ということが伝わったかと思います。

 小豆島には寒霞渓をはじめとした観光資源がたくさんあります。やはりこちらから観光ルートを提案する必要がありました。

 観光客に船着き場を拠点に楽しんでいただくにはおもてなしの精神が欠かせません。投資できる資金的な余裕も潤沢でない中、色々と工夫してきました。そのひとつがレンタサイクルとレンタカーの導入です。船着き場を起点に島内を巡っていただくことを想定しています。売店も充実させました。運賃の支払いにクレジットカードや電子マネーも対応し、外国人観光客にも利用しやすいようにしてきました。我々が活気づくことで船着き場周辺にも良い影響があると考えます。ただ船員の方々は現場一筋でやってこられたので、おもてなしの視点を理解してもらうのが難しかったのかもしれません。

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