そもそも私は、医者でもあります。成人病と食との関係などを子供たちに伝えることは非常に大切です。きちんとした食事をとれば様々な病気が防げる。体にいい食事や食生活というものを子供たちに等しく植え付けたい、という思いから、給食導入を公約に掲げ、導入した経緯があります。

 しかし、ただ給食を導入するというだけでなく、例えば家庭科、理科、体育の時間、色々な場所で食の大切さを説明すべきだった。その根本的なところが抜けていたのです。

 ですから今後は、きちんとした食育のカリキュラムを用意し、町全体で取り組んでいきたい。単においしいものを作ろうと考えがちですが、その前に食べることのありがたさや、食べる意義を理解させることが必要です。

再開に向け調査費を計上

 その上で、体にいいもの、温かいものの提供を目指したいと思います。既に給食再開に向け、18年度の予算で1000万円の調査費を計上しました。デリバリー方式や自校方式に加え、両校一括で調理する「センター方式」、小学校で調理する「親子方式」も含め、ゼロベースで検討していきます。

 当時は法律が厳しく、大磯町に給食センターを作れなかったんです。今は規制が緩和され田んぼの真ん中でも作れる。選択肢が広がったので、温かい給食を食べさせてあげるために、あらゆる可能性を模索したいと思います。

 結果的には大磯町が給食のありようというのを世に問うたわけで、問題提起にもなりました。昨年11月から中学校への給食導入が始まった同じ神奈川県の鎌倉市では、デリバリー方式ですが、ご飯と汁物を専用の保温器で運ぶなどの工夫を凝らしています。

 大磯町も、リカバリーショットではないですが、日本で一番といわれるような給食のあり方を、町の人と一緒になって作っていきたい。そのためには、今は理解できない子供たちに、きちんと将来を見据えた配慮をしてあげる。繰り返しになりますが、子供たちの心に給食の必要性が響くような食育をしてあげることが私たち大人の務めだと思っています。

異物混入、複雑な理由

 異物混入の話になると、中崎久雄町長は奥歯に物が挟まったように「その件は原因が特定できない以上、これ以上お話しできることはない」と繰り返した。だがそれは、決して無為無策や責任逃れではない。子供への愛情ゆえの忖度だ。町の発表では、毛髪や繊維、虫などの異物混入が計84件。うち15件が業者側での混入の可能性があるという(確定はしていない)。となれば、残りは学校側で混入した可能性が高いが、町はそれ以上の言明を避ける。

 この件について町関係者はこう話す。「異物混入の報告は給食導入があった2校のうち1校に偏るなど地域性があり、教室によっても偏りがあった。最終的には毛髪のDNA鑑定などをすれば真実は明らかになるが、そこまでやるべきではない」

 また、残食率についても、同じ業者が納入している神奈川県愛川町では、10%と全国平均より多いものの大磯町の26%を大きく下回り、大磯町特有の要素が強いと捉えることもできる。

 給食を嫌った子供たちのいたずらも含まれるのか。だが町として犯人探しをしたり、子供を責めたりするわけにはいかない。さらに傷をつけてはならない。そんな中崎町長の苦渋の思いが記者には透けて見えた。いずれにせよ、中崎町長の言う「食育」が、給食問題改善の鍵になることは間違いなさそうだ。