:その活動の中から、本当のビジネスが生まれるかどうかは別として、これまではお互いに縁遠いと思っていた他の分野の人たちが、どのような発想で、どのようなテーマに取り組んでいるのか、身近に感じていただいて、それを自社に持ち帰ってもらい、その企業の次の活動に、発想力を広げて活かしてもらえることを期待しています。

 日本には、米国のシリコンバレーのような異業種間も含めて活発に交流できる環境は、なかなかありません。このハンディキャップを乗り越えるために、日本企業の頭を柔らかくする機会を設けないといけないという問題意識が、この活動の背景にあります。

 近年、世界的には、自らにない技術やビジネスモデルを手にするための方策としてM&A(事業の合併や買収)が活発になってきています。時間をお金で買おう、という戦略です。

 これまでの日本企業のM&Aは、多くの場合、自らの事業領域、事業分野の周辺の技術を想定して買収案件を見定めているように見えます。今後は、それに加えて、これまでの自らの事業形態とは異なる領域に属する企業との提携やM&A、つまり、新しい化学反応を引き起こすことによって新たな発展を目指そうというような活動がどれだけ生まれるかに注目しています。

メーカーと顧客がつながりっぱなしの時代

田中:インターネットに全部つながるという社会を前提にすると、ものを作る段階から、つながった後のことを考慮していないと成り立ちません。

:テレビについて見れば、放送はそもそも「送りっ放し」と表記するくらい一方向型でしたが、現在、視聴者との双方向の対話型に変わってきています。多くの分野で、顧客とのつながりが深まったり、双方向型に変わっていったりすることが起こるはずです。

 ものを作って売るビジネスでも、従来型のビジネスモデルではものを売った時点で顧客との関係はいったん切れます。顧客から修理やメンテナンスの要求がない限り、特定の顧客を意識することはありません。しかしIoTの時代になると、メーカーと顧客とはつながりっぱなしの状態となります。そうすると顧客との関係は、ものを売る時がいわば関係構築の「始まり」であり、顧客とつながった後に、顧客にどういうサービスや価値の提案をすることができるかが問われるようになります。そうなると、顧客との間を媒介する「もの」は価値提供のゴールではなく、一つのツールという位置づけになります。

 こうした変化をチャンスと考えている企業は日本にも多くあります。顧客とつながることを、自社製品の競争力の向上にどのように生かすのか、あるいは、自社製品を生かしたプラットフォームをどのように作っていくのかを構想している中小企業もあります。

 このように、IoT時代の事業モデルに関して、決して日本が乗り遅れているとは、必ずしも思いません。ただし、IoTの時代のチャンスをものにするためには、これまでの延長線上にはない発想が必要になってきます。