:米国などの企業は、まずは事業モデルの組み立てから発想し始め、その事業モデルを実現するには、どのような要素技術が必要で、それをどのように獲得していくのか、という順に考えていく傾向が強いでしょう。いわばトップダウンの思考方法で、多くの日本企業と逆の発想と言えます。

 現在、米国の情報通信企業が構築するサービスや製品に対して、日本の企業は素材・部品の供給者として使われているという形になっています。もちろん、「ことづくり」にも、必ず「もの」は必要で、その「もの」の供給に徹するというのも、一つの生き方かもしれません。

 しかし、かつて日本の企業は世界に新しい製品・技術を提案し、それを優れた品質とコストで世界の人々の暮らしを豊かにしてきました。仮に日本の企業が「縁の下の力持ち」としてだけではなく、これからも新しい価値提案を行い続ける存在として尊敬されようとするなら、優れた要素技術に裏打ちされた「もの」と「こと」の双発モデルというスタイルに脱皮する必要があると考えています。

必要とされる斬新な発想

田中芳夫・東京理科大学大学院教授

田中:大企業から中小企業まで、これだけ優れた技術が揃った国は珍しいでしょう。技術の展開として、業界を超えた縦方向の組み合わせだけでなく、同業他社を含めた横方向に組み合わせることができる仕組みの構築も考えられないものでしょうか。

:関西には、大企業から中小企業まで、良いものを生み出せるものづくり企業が分厚く集積しています。これまでは、大手電機メーカーが、関西のさまざまな技術や企業をつなぎ合わせ、ネットワークを形成する役割を果たしてきました。

 しかし、これからのIoTやAI(人工知能)の時代には、従来とは違う発想で、新たなビジネスモデルを実現するための技術や企業をつなぎ合わせるアプローチが必要になってくるでしょう。

 多くの企業はいま、オープンイノベーションを強く意識しています。中でも、IoTの分野では、オープンイノベーション抜きにして、企業の強みを活かすことが難しくなってきます。自前技術に頼るだけでは、時代の要請に応えるためのスピード感に追いついていかないためです。

 関西でも、ダイキン工業やサントリー、日本電産などが、新しい研究所を創設したり、創設の準備を進めたりしています。こうした研究所が設立される背景として共通しているのは、オープンイノベーションを強く意識している点です。

 オープンイノベーションで問われるのは、いかに従来の発想を超えた連携や提携に踏み出せるかどうかです。

 企業も、その必要性は認識しています。しかし、それぞれの研究開発の現場では、一足飛びに新しい発想に踏み出すのは簡単ではありません。そこで、従来のビジネスの延長線上では出会わないであろう企業や研究者との接点・ネットワークをいかにたくさん作れるかが重要になっています。

 関西には、「ものづくり」だけでなく、さまざまなサービスを提供する企業も多くあります。そこで、近畿経済産業局では、さまざまな分野の「ものづくり」やサービスの企業が参画できるような異業種交流の場を立ち上げました。これを「MIRAIDEA」と名付けています。MIRAI(未来)とIDEA(アイデア)をかけ合せた造語です。ここでは「ものこと双発」という発想をベースにしながら、どのような斬新な発想が生まれるか、実験的な議論の場として活用していただきたいと考えています。