これまでの2回で、オープンイノベーション2.0では、どのように事業モデルが変わっていくのか、さらに、イノベーションにおいて、どのようなプレーヤーが、どのような関わり方をしていくのかを解説してきました。今回は、産業構造がどのように変化するのかについて紹介します。

 前回までに、オープンイノベーション2.0では、イノベーションによって変わる対象が社会システムであること、その変化の大きさや対象となる技術やサービスが幅広いために、個別企業の協力だけでは間に合わず、さまざまなプレーヤーが入り乱れて成立することを示しました。

 多くの知恵が集まることで、新たな社会システムを生み出す製品やサービスの形が見え始めたとします。いよいよ製品やサービスが具体化し始めて、事業のモデル、採算性などを検討する時には、関係者のしがらみが少ないようなところで事業の主体を作ることになるのではないでしょうか。

ウーバーやエアビーアンドビーの事業とは

 米国のタクシー配車サービスのウーバー(Uber)や、宿泊施設の空き情報サービスのエアビーアンドビー(Airbnb)ならば、タクシーや宿泊施設の稼働状況などを把握し、空いているタクシーや部屋を効率的に活用しようと考えて、ソフトウエアを作っただけではありません。

 ウーバーに登録しているタクシーの運転手は、副業で取り組む人がほとんどといわれています。本業は別にあるけれど、もう少し月給を増やす必要がある、あるいは、失業中で次の職を得るまでのつなぎとして、多少の収入でも欲しいといった人たちです。

 こうした運転手が運用しているタクシーを、乗客と効率的にマッチングするだけでなく、「安心・安全」なタクシーを手配していることが売りになっています。例えば、過剰に料金を請求したり、遠回りをして乗車料金を不要にかさ上げしたりするような行為があれば、乗客からITを通じて指摘されることになります。

 当然、こうした運転手は排除されていき、逆にサービスの良い運転手の評価がはっきり上がっていくような仕組みです。サービスを自主的に向上していく運転手も少なくないと聞きます。

 支払いはクレジットカードとなりますので、現金のやり取りで、釣銭をごまかされた、偽札を掴まされたといった悪事も生じません。このように、安心・安全を買っている乗客が少なくないようです。

 これだけでも、ウーバーだけでなく、運転手や乗客、クレジットカード会社など、広い関係者のそれぞれに利点が大きい仕組みが成り立っていることがわかります。

 既存のタクシー会社では、アイデアを思い付いたとしても、運転手との関係一つをとっても、実現するのは難しかったように感じます。それぞれの利害関係が少ないところに、ウーバーという企業が立ち上がったことで成り立ったと言えます。

 若干ずれますが、今年の春に米国サンノゼに行った際の話です。レンタカーを借りたのですが、返却時に営業所が閉じていたので電話をしたところ、「一般の客か? ウーバーの客か?」と最初に聞かれて、ウーバーがそこまで広まっていることに驚きました。新しい仕組みがあっという間に広がるオープンイノベーションの進化を感じました。

 今回、紹介していく産業構造の変革は、例えば、ウーバーが日本で立ち上がっていたとしたら、どのような壁が生じていたのかを想定することから始めます。

日本の役所も変わるとき

 タクシーの配車サービスですから、自動車を使った社会システムといえます。しかし、タクシーの運転手は登録していますが、タクシー会社のように、従業員として雇用しているわけではないし、営業用のタクシーを保有しているわけでもありません。

 これは、自動車分野の会社なのでしょうか。それとも、IT分野の会社なのでしょうか。

 日本の場合、この形が既存の製品やサービスの分野として明確に分類できないと、行政の許認可一つとってもうまくいかず、実現できないことが少なくありません。何省の何局何課の管轄になるのか、というところからです。