前回は、オープンイノベーション2.0ではどのように事業モデルが変わっていくのか、アップルの「iTunes」や、コマツの例を紹介しながら、見ていきました(『コマツのIT革命、GEとの提携でどう進化するか?』参照)。今回は、イノベーションにどのようなプレーヤーが、どのような関わり方をしていくのか、紹介していきます。

 閉じた環境で実現している「クローズドイノベーション」や、オープンではあるものの、個別企業などの固定化された関係で実現するオープンイノベーションの第一段階である「オープンイノベーション1.0」のモデルは、漏斗(ろうと)のような、円錐状の構造から細い管を通って出ていく図で表されることがあります。一つの企業を中心に、あたかも口径の小さい管を通っていくように、一定の方向に製品やサービスが提供される状況を図にしたものです。

 「オープンイノベーション1.0」のモデル図(出所:米UC BerkeleyのHenry Chesbrough氏)
「オープンイノベーション1.0」のモデル図(出所:米UC BerkeleyのHenry Chesbrough氏)
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 イノベーションが生み出される場所は、円錐状の部分です。特定の企業など限られた場所で、囲われた環境で生まれるために、円錐状で閉じた状況がイメージされています。この円錐状の部分で生み出されたイノベーションが、細い管を通って出ていくように描かれるのは、既存の市場、あるいは、新たに立ち上がるにしても、思い描いている市場があり、そこにターゲットを絞って提供していることを示すためです。

 「クローズドイノベーション」の場合、イノベーションは、その企業の中で集中的に生み出されます。そして、製品やサービスは、その企業が定めた道筋や手法で展開されます。展開は、直線的な流れとなります。こうしたことから、閉鎖的な取り組みであると位置づけられています。

 「オープンイノベーション1.0」では、大きな構図は「クローズドイノベーション」と同様ですが、状況が少し変わってきます。ある企業Aが、何らかの製品やサービスなどを生み出そうとするときに、自社だけでは実現できないために、自社で不足している要素を持つ他社Bなどの力を借りて実現するのが、「オープンイノベーション1.0」です。

 まず、イノベーションを生み出す部分で、他社Bと共同の取り組みとなります。技術なのか、知識なのか、サービスなのか、資金なのか、何かを求めて他社と協業します。

 この時、イノベーションを生み出すために必要な何らかの要素を提供した他社Bは、そのイノベーションを共同で生み出したことで、その技術やサービスを、さらに別な用途に展開できることに気が付く場合が少なくありません。あるいは、新たな市場を生み出す可能性に気付きます。

 すると、この他社Bは、企業Aの目的だった製品やサービスとは別の用途や分野、つまり、企業Aが主導するオープンイノベーションによる漏斗の管から製品やサービスを供給する以外の出力口を生み出します。

 この様子を表したのが、漏斗のような構造において、円錐状のイノベーションを生む部分に穴が開いていて、違う方向に向かって出て行っている「オープンイノベーション1.0」の図です。

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