「独占型」から「オープン型」への変化は、この段階で実現していた可能性もありました。実現できなかった理由の一つは、コムトラックスを支えるIT(情報技術)システムを、自前で手掛けざるを得なかったことにあると見ています。

 実は、コマツは、大手IT企業に協力を求めていました。しかし、建設機械の販売台数は、自動車などと比べて小さいので、規模の魅力が小さいようにIT企業の目に映るといったことから、協力を得られなかったということです。

 仕方なく、自社でITシステムを開発したようですが、ここでIT企業の協力を得られ、さらに、自社特有ではなくオープンなITシステムを活用できていれば、他業種のサービスと共用できるような部分は共通化したシステムとすることで、コマツにとって、低コストでITシステムを開発・運用できた可能性がありました。ただし、必ずしも今のような業界での地位を確立できたかどうかはわかりません。

GEとの提携を機に「オープン化」へ

 コマツはその後、こうした事業モデルで必要なデータ解析に関して、米ゼネラル・エレクトリック(GE)と提携しました。GEは現在、IoT(もののインターネット化)に不可欠なビッグデータの解析といったITを支える存在です。米インテルやIBMなどと提携し、これからの時代に求められるIT基盤を築いてゆくのでしょう。

 コマツはGEと組んだことで、ようやく外部の大手IT企業の力を借りることができるようになりました。コムトラックスを搭載した建設機械の台数が、数十万台という規模に拡大してきたことで、大手IT企業が相手にしてくれる状況になってきたとも言えます。

 GEは、自社製の航空機用エンジンや火力発電用のガスタービンなどで、コムトラックスに似た事業モデルを展開してきた先輩でもあります。

 コマツが、そのような意向を持っているかどうかはわかりませんが、今後の展開として、どこかの時点で、IT基盤を共通化しながら、それぞれの分野で競争力を高められるような取り組みを実現する方向に進むことを期待しています。こうなると、従来の日本企業のITの活用とは、ひと味違う段階に入ります。以下の表のように「独占型」から「オープン型」に移行したと言えるようになるかもしれません。

コマツがGEとITシステムに関して提携した際の事業モデル。「独占型」から「オープン型」に移行した

 さらに、例えば鉱山であれば、現地で稼働しているコマツの鉱山用機器と、GEの発電設備の稼働状況を最適化したり、鉱石の物流まで含めた全体の運用効率を高めたりといった段階に入ってくると、コマツやGEとは直接、取引していない企業まで、作り上げたシステムを活用する可能性があるかもしれません。

 こうなってくると、コマツとGE、あるいは鉱山会社といった個別企業による提携関係を超え、「直線的」から「循環的」に、「組織化」から「エコシステム化」という段階に進んだと言えると思います。

鉱山などの周辺分野へ波及した際の事業モデル。オープンイノベーション2.0のすべての要素を満たしている

 このように、コマツとGEの提携は、ITシステムの活用だけに留まらず、iTunesと同じように、オープンイノベーション2.0による事業モデルに、完全に転換する可能性を秘めているのです。