コムトラックスで「サービス化」

 わかりやすくするために、日本のものづくり企業とオープンイノベーション2.0の状況を探ってみたいと思います。コマツの例を見てみましょう。

 良く知られているように、コマツは建設機械という製品を販売することを軸とした事業モデルから、 機械稼働管理システム「KOMTRAX(コムトラックス)」というサービス起点の事業モデルに変革させました。さらに最近では、顧客の鉱山や土木・建築現場で「道路を作る」、「採鉱計画に最適な機械運用」といったソリューションまで、事業モデルに取り込んでいます。

 コマツの場合、コムトラックスを製品化するまでは、建設機械を販売することと、販売後のアフターサービスを主とする事業モデルでした。日本の典型的な「ものづくり」企業と同じような姿といって良いでしょう。これまでの事業モデルと、オープンイノベーション2.0による事業モデルという視点で見ると、オープンイノベーション2.0による事業モデルの要素は下の表に示すように一つも満たしていませんでした。

コマツが建設機械の製造・販売を行っていた際の事業モデル。オープンイノベーション2.0の要素は満たしていない

 ここに、コムトラックスが加わることで、単に建設機械を売ることではなく、サービスを売るということを中心とした建設機械のバリューチェーンへと拡大していきました。コムトラックスは、世界中で稼働する建設機械から自動で情報を収集し、遠隔で監視・管理・分析を可能にしました。建設機械の位置情報、稼働時間、機械の異常、燃料の状況といった、さまざまな情報が現場に行かずに把握できます。

 こうした情報を活用することで、顧客に対して、建設機械の購入から運用、売却までのライフサイクルでのコストを、それまでよりも低減できるようになりました。例えば、故障を事前に予知して予防的にメンテナンスを施したり、省エネ運転の手法を助言できたりします。稼働状況が記録され、かつ、適切にメンテナンスされているので、中古車としての売却額が高くなります。

 これによって、建設機械の目的である施工の出力は高めながら、建設機械の一生に顧客が費やすコスト、つまり初期投資、サービス・メンテナンス費、燃料費、オペレータ工賃などの合計から、中古車として売却した際の価格を差し引いたコストを下げられるのです。

 コムトラックスによって、オープンイノベーション2.0による事業モデルのうち、「大量生産指向」から「価値創造指向」、「消費型」から「保存・維持型」、「エネルギー・資源集中」から「知識中心」、「毒物・危険物に頼る傾向」から「安全にこだわる傾向」、「化学・物理型」から「生物学・情報型」、「製品型」から「サービス型」には、移行していたと言えます。

コマツがコムトラックスを実現した際の事業モデル。オープンイノベーション2.0の要素の複数を満たしている

 しかし、「独占型」から「オープン型」、「直線的」から「循環的」、「組織化」から「エコシステム化」については、まだ実現できていませんでした。