2000年の初めにヘンリー・チェスブロウ教授により提案された「オープンイノベーション」。不足する知見や技術などを、相互に補完しながら事業を開発・運営していくことで顧客価値を創造・実現することを目的に提唱されました。その後、より社会に広げるとともに、ネットワークを利用して大きな課題を解決していく方向に進化し、その取り組みを「オープンイノベーション2.0」と呼ぶようになりました。地域、個人、企業や行政など、より広い関係者が関わり、大きなうねりを作り出すように展開していることが特徴です。

 前回までは、このオープンイノベーション2.0の概要や、なぜ日本企業にもこのような取り組みが必要なのかを紹介しました。今回のシリーズでは、具体的な例を通じて、議論していきたいと考えています。

従来の事業モデルと何が違うのか?

 オープンイノベーション2.0を代表する例としてよく紹介されるのは、米アップルの「iTunes」です。アップルが仕組みを作り上げましたが、iTunesを通じた音楽やその他の応用サービスを提供している企業や団体は、さまざまです。これまで、アップルとは直接、取引関係がない企業や人たちが、この仕組みを使って音楽配信やさまざまなサービスを提供しています。

 これまでの事業モデルと、オープンイノベーション2.0による事業モデルは、どのように異なるのでしょうか。それを比較したのが下の表です。大まかにいうと、大量生産型の「ものづくり」による製品販売を主とするモデルから、社会システムを形づくるようなサービスを軸とするモデルに代わります。

「iTunes」を通じた事業モデル。●印は、「iTunes」が実現している事業モデル〔出所:欧州共同体(EC)の「オープンイノベーション2.0」白書のデータを基に作成、以下同〕

 この変化に沿って、化学物質を大量に使って、力づくで「ものづくり」していくようなモデルから、できるだけ地球環境への負荷が少ない「ものづくり」に変えるとともに、新たな社会システムを実現するような知恵に重きを置くモデルに代わるのが、もう一つの側面です。「iTunes」を通じた事業は、このオープンイノベーション2.0による事業モデルを見事に満たしています。

 まず、従来の事業モデルの「大量生産指向(volume driven)」が、オープンイノベーション2.0による事業では「価値創造指向(value driven)」に変わります。また、従来の「製品型(product)」から、「サービス型(service)」に変わります。