日本市場の世界基準化が「ことづくり」を強くする

土屋:その点で、もう1つ、ディスポーザー(台所用の生ゴミ粉砕機)の例を紹介しましょう。台所の流し台のシンクの下で、生ゴミと水を入れて粉砕し、排水管に流す機器です。最終処理場で微生物の働きを生かし、生ゴミの成分を分解します。

 日本では、事実上禁止されていた時期があり、また、ゴミ処理を税金で賄っているために費用を家計が負担しないなど、さまざまな事情があり、広く普及していません。

 ディスポーザーでは、エマソンは金額ベースで世界の9割の市場シェアを持っています。米国を中心に普及していますが、日本や中国などでの需要を見込み、以前は、日本企業と共同で展開しようと考えていました。日本企業との提携が必要だったのは、米国などで販売しているディスポーザーでは、日本や中国などの市場を開拓できないと感じたためです。

 米国は、広い住宅が一般的です。エマソンのディスポーザーは、こうした米国の住宅や生活に合う高級機となっています。頑丈で大きく、駆動音が大きいのです。いろいろなものを入れても対応でき、間違ってナイフやフォークを入れてしまっても、直しやすいといった特徴があります。

 このまま持ち込んでも、日本の住宅では成功できません。小型で、駆動音が小さいディスポーザーを作るのは、日本企業の方が得意だろうと考えました。実際に、日本企業と提携し、製品化できたのですが、市場が小さかったために提携先の企業が撤退してしまいました。

 その後、中国で市場を広げる好機がやってきました。以前の中国では、生ゴミは埋立処理されていました。日本のように焼却しようにも、費用面で焼却炉を多く立てることができないからです。

 人口の増加によって増え続ける生ゴミへの対応として、規制が緩和され、ディスポーザーの利用が可能になりました。これによって、中国でディスポーザーの市場が瞬く間に立ち上がりました。一種の社会変革にもなりました。

 中国のディスポーザーの市場は、日本の家電のような市場となります。求められる製品も、米国で主流の高級機ではなく、エマソンが日本で展開しようとしていたようなものです。日本企業にとっては、投入できる製品を持たないため得意とする市場を逃しており、惜しい限りです。

 日本企業の力を持ってしても、足元の日本市場が緩和され、対話しながら事業を展開できるような、世界基準の市場になっていなかったため、製品が育たなかった例でしょう。「もの」が社会システムとの結びつきやニーズの変化をリードし、市場に「化学反応」を起こすことが「ことづくり」だと思います。まだまだ可能性は高いと確信しています。