従来の姿形にこだわる故の高コスト

土屋:テレビの例で、このような話があります。海外で一流のホテルに泊まっても、客室のテレビが日本製ということは、まずありません。韓国のLG電子やサムスン電子製が多いです。われわれは日本メーカー製のテレビに慣れているので、電源を入れても画像が表示されるまでに時間がかかる、チャネルもなかなか切り替わらない、ということに戸惑います。

 コストが安いテレビだからなのか、そのような仕様のテレビなのか、わかりませんが、これが世界の標準です。日本のテレビだけが異質で、電源の入切やチャネルの切り替えに瞬時に反応します。このように、市場の特性や価格、品質のバランスを見極められず、日本で過剰な品質に慣らされていると言えます。

 日本メーカーでは、チャネルの切り替えのテストを何万回も行うそうです。テレビの寿命を迎えるまでに、チャネルをそんなに切り替えることはないし、しかも、今のチャネルの切り替えは、以前のように「つまみ」を回す方法ではありません。「つまみ」の時代には、切り替えの繰り返しによって、磨耗して接触が悪くなる場合もあったかもしれません。いまはリモコンのボタン操作なので、現実的ではない過剰なテストと言えそうです。

田中:顧客が価値を感じていない部分に一生懸命注力して、利益率を下げていることが伝わる話です。価値が感じられず、過剰なだけの部分なので、対価をもらえず利益が下がるという悪い循環がありそうです。

土屋:開発でも、似たような話があります。エマソンもメーカーですから、開発担当者を多く抱えています。中でも、インド人が多い状況です。インド人には、優秀な人が多いことも理由ですが、開発体制も理由にあります。

 研究や開発には、段階があります。基礎技術の開発や、将来に向けた長期的な開発は、一般的に本社の中枢に組織を設け、世界中から優秀な研究者や技術者を集めて取り組んでいます。

 製品の設計など、より市場に近い開発には、このようなトップ人材ばかりを集める必要はありません。現地の学校を卒業し、市場を良く知っている人が向きます。こうした人を、本社で研修した上で配属することで、適切な開発の成果を得ながら、研究開発コストを下げる体制ができます。エマソンを含めて多くで採用されています。

 日本企業の場合、市場に近い開発にも、日本の大学を卒業した優秀な人ばかりを並べがちです。これではコスト管理は、苦しいものになってしまいます。

 日本企業のコスト管理というと、「乾いたぞうきんを絞る」などと称されるように、苦行に取り組む印象が強くあります。しかし、開発体制だけ見ても、すべてをトップクラスの高いコストで取り組む必要はありません。コストの高い10人で取り組むよりも、20人で取り組んで、同じ成果が上がり、その方が安ければ、それで良いのです。技術開発でも、こうしたコスト管理があります。日本企業は、このあたりも過剰になっている印象です。