同質化した特殊な日本市場を飛び出せ

田中:日本は優秀な人が多くいますので、その知恵を集める仕組みが肝心ということですね。

土屋:伝統的な外資系企業で、日本で大きな成功を収めている事例は、実はそれほど多くありません。成功の典型例は米IBMですが、例えば、米ゼネラル・エレクトリック(GE)が大きく成功できているのかどうかというと、ジェットエンジンの事業は成功例ですが、その他は成功しきれていない例もあります。また、シティバンクが個人向けサービスから撤退するなど、世界的な企業でも、日本ではそのまま成功できていない例が見られます。

 これは、日本が同質で、特殊な市場であるために起きていることだと捉えています。逆に、日本企業にとっては、異質な世界を攻めきれない原因の1つになっています。

 日本企業は、同質の市場において、ものを作ることに慣れ過ぎてしまったために、なかなか異質な世界で成功できません。もちろん、自動車産業のように、世界的に成功を収めている産業もあります。

 その市場で求められている「もの」や「こと」を、いかに効果的に提供していくのかが付加価値となります。開発の段階から、発想を変えていかないとできないと思います。

 市場ごとの特性について、エマソンでは、モーターの話が良く出されます。当時、ユーザーはミシシッピ川を通って西部に向かう時に、モーターを買っていきました。遠方で使い始めてしばらく経った時に、モーターが壊れた場合の対応です。

 米国は広いので、修理に行けない地域もあります。そこで、エマソンでは、もう1個モーターを送る場合がありました。そのモーターは、条件などによって半額や無料で提供しています。

 現地のユーザーには、壊れたモーターを器用に修理できる人がいる場合もあります。この場合、エマソンが新たに提供した新品のモーターのほかに、そのユーザーは復旧したモーターも使うことができます。復旧後、元の性能はフルに引き出せなくても、例えば、半分の50%の性能を引き出せたとすると、半値や無料で150%の性能に拡大したことになります。こうした、地域の特徴に合わせた考え方で、保証などが考えられてきました。

 日本の場合、国土が狭いために移動が容易で、同じような故障が生じたら、 メーカーはすぐに修理に向かうでしょう。メーカーが修理に応じるのは、「欠陥品を提供する」などといった悪評を恐れすぎることもあります。狭く濃密な社会ならではの対応と言えます。

 日本企業がよく指摘される「過剰品質」とそれに伴うコストの高さは、このような背景から生まれています。

 日本は、良いものを作れば売れる、という市場で、現実に「ものづくり」で世界の市場をリードしてきました。しかし、そのような品質が本当に必要なのかどうか。過剰な品質で、販売価格が高くなっても、日本は裕福な国なので、受け入れられるかもしれませんが、他の国ではそのようなことはありません。