田中:エマソンの株価が、GEなどに比べて下がったことに危機感を抱いていたようですが、日本企業は売上高の比較に熱心で、株価はあまり比較しません。

土屋:米国の方が、株価に対して敏感です。日本企業の感覚では、株価の上下は企業の内容よりも、市場の状況に大きく左右されると考えがちでしょう。米国の場合、株価は今後の期待値の表れと認識します。

 このため、規模が大きく、売上高が下がった期を含めて、営業利益率で16~18%という水準を維持し続けていても、期待値としてみると、将来性に疑問を突き付けられているという危機感を持ちました。

意思疎通に限りがある中での人事のあり方

田中:GEやエマソンのように、今後、日本企業が変わっていくために、何が重要でしょうか。

土屋:人です。日本企業は、技術や製品開発などは、元々優れていますし、世界に冠たる企業が多くあります。

 米国企業は、世界中から優秀な人を集めることができます。これは、日本企業にはない特徴です。集めた人を切磋琢磨し、誰が一番優秀なのかを見極めながら、単に順位をつけるのではなく、適性を見極めて、どのような仕事をしてもらうのかを決めていきます。このプロセスにはCEOも加わり、熱心にトップダウンで進めていきます。

 日本企業の場合、人事考課や異動の会議に社長が加わる、海外のローカルの幹部の評価に本国の社長や会長、CEOが関与する企業は、あまりないでしょう。一方、エマソンに限らず、米国企業のほとんどはこのようなスタイルです。

 もう一つ、日本企業が恵まれている故の弱点があります。日本企業は、とくに大企業の場合、日本人の同質の集団を学卒で採用し、卒年ごとに管理し、第一次の選抜者を35歳で課長に就任させる、次に、45歳で部長に就任させるといった手法をとります。これは、「楽な人事」といえます。

 米国などの海外企業では、ダイバーシティと評されるように、国籍を問わず、英語は話すけれどもレベルに差があったり、訛りが強いといった理由でそれぞれの人の能力などを深く理解するのが難しい中で人事を行って行きます。

 お互いに100%理解し合うのは難しい人で構成された集団を管理しながら、国籍や性別や年齢は問わず、英語の巧拙もあまり関係なく、どの人に、どのような能力があり、どのくらいの潜在能力が、いつ頃花開くのか、徹底して把握しようとしています。

 こうしたところは、日本企業はあまり身に付けていないと思います。優秀な同質集団の人を集められるが故に、異質な人の中身をみて、適材適所で企業の将来のために布石を打つような部分が欠けてしまっているのではないでしょうか。

(次回に続きます)

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