田中:ベンチャーキャピタルには、教育を目的にしているところもありますので、そうした投資家の下に派遣してもよさそうです。

瀬戸:それも候補の1つです。海外に派遣すると言うと、派遣先から戻らず、そのまま独立する人が出てきて、得た知見を産総研で生かされない恐れがあるという指摘が出てきます。

 それでも良いと思っています。様々な分野に人材が飛び出していくことも、産総研の力になります。今後、若い世代の様々な経歴を持った優秀な人材が必要です。多様なキャリアパスを描ける、多様な人材がいることが、優秀な人を引き付ける素地となります。

キャリアパスの多様化がカギ

田中芳夫・東京理科大学大学院教授

田中:そうして広がった人的ネットワークを使いこなせるようになると、可能性が広がってきます。

瀬戸:いまの産総研は、キャリアパスに関してはシングル・カラーです。事務系ならば経済産業省等役所に出向する、研究者であれば海外の研究機関などに留学するといった変化はありますが、最終的には研究者は大学の教員を目指すことがほとんどとなっています。

 この状況を変えて、目指すキャリアパスが多様にならないと、産総研の魅力は上がらないと感じています。様々な分野に産総研の出身者が散らばり、思いもよらないネットワークが広がる状況が理想です。企業や投資家、コンサルタントなど、いろいろなキャリアパスが実現できるようになるには、思い描いているキャリアパスが多様な人たちが集まり、優秀な人がどんどん外に出ていくようになって初めて、実現できるようになります。

 産総研発ベンチャーでも、産総研が応援してうまく行き、そのまま産総研に戻ってこない人が増えてくれば、産総研に入って将来は起業しようと志す人たちが集まってくるかもしれません。

 日本は全般的に、退職して外に出ていく人たちに対して、心情的に冷たい傾向があるかもしれません。そうせずに、温かく見守って、どんどん外に出ていく風土になった方が、得るものは大きくなると思います。