田中:産総研は、以前の縦割り組織から、徐々に横のつながりができ、だいぶ変わってきました。

瀬戸:強調しているのは、企業とこまめに会って、話を良く聞いて、すぐに対応して動いてほしいということです。研究者は特に、企業の声を直接聞く機会が少ないという状況を変えなくてはいけません。

 産総研では、イノベーションコーディネーターと呼ぶ、企業からの共同研究の要望や、研究者を派遣してほしいといった要望を、産総研内の適切な研究組織や研究者に橋渡しするための担当者を置き始めました。産総研の職員で約70人、企業から招いた人が約30人という規模です。企業から招いた人は技術職の執行役員クラスが多く、中には、CTO(最高技術責任者)を務めていた人もいます。

 イノベーションコーディネーターは、常日頃からの企業訪問やセミナー開催などを通じて、企業のニーズを把握したり、産総研内の技術を紹介したりしています。ここで関心を持った企業には、次の段階として、研究者を連れて企業を訪問しますが、この対応の速度と内容が企業の期待を下回ると、産総研はすぐに実現できないと判断され、何も生まれません。

地方の中小企業と関係を濃くする

 このイノベーションコーディネーターの活動で課題だったのが地方の中小企業まで活動が行き届かなかったことです。そこで、地方自治体が持つ研究機関の研究者にもイノベーションコーディネーターとなってもらい、産総研側のイノベーションコーディネーターと一緒に、中小企業を歩き回ってもらっています。こうして、産総研と接点がなかったり、関係が薄かったりした中小企業との関係を濃くしていきます。

 企業にとって、産総研と組む利点は、研究開発のコストを下げたり、リスクをヘッジしたりすることにあります。新しい分野に挑戦する際、本格的に経営資源を投入できる段階ではなくて、見極める段階で産総研を使いたいというように。

 この時に、企業が産総研に研究者を派遣すると、コストが下がりづらい現状があります。この対応が、次の課題となります。企業にとって、産総研に研究者を派遣して開発すると、コストが下がるようにできれば、連携の密度が上がってくるでしょう。

(次回に続きます)