研究の基礎能力の向上を目的とした講義・演習で構成する「産総研イノベーションスクール」にも注力しています。企業の力を借りることで内容を充実させ、その企業には、希望する分野の人材を育てることでお互いに利点の多いプログラムとします。

高い技術力をどう生かすのか?

田中芳夫・東京理科大学大学院教授

田中:産総研は、技術力の高さでは折り紙つきです。それを社会にどのように出して、社会がどのように使いこなしていくかが重要です。

瀬戸:外部との共同研究は約1700件取り組んでいます。その3分の1は中小企業との共同研究です。中小企業との共同研究には、意義があるものが多く、意思決定の速さも魅力ですが、一方で、必要な研究費用をその企業内だけで賄うのが難しいという課題があります。どうしても公的な研究資金に頼ることになりがちです。我々が進めているスタートアップ事業を起点として、公的な研究資金を獲得しながら取り組むことが多くなります。

 産総研の場合、技術や設備などの「現物」は提供できますが、資金を提供するといったことはできません。ベンチャー企業などの場合、小額でもかまわないので、産総研が出資したことが将来性の評価を高める要素と認められ、投資家からの出資に弾みがつく可能性があります。こうした目的の投資という手段を持てるようになりたいですね。

 「産総研発ベンチャー」もありますが、目的は株式公開ではなく、技術を活用したい企業に買い取ってもらうことを主眼に置いています。いずれにしても、企業との連携が鍵となります。

田中:米国の場合、ベンチャーが株式公開まで達成できるのは約2割で、残りの約8割は買収などで企業に吸収されるようです。顧客の価値を生み出す仕組みにできる企業が、1つの技術を生かしていく形です。技術の価値が上がることになりますので、お互いに良い結果といえます。