産業技術総合研究所(産総研)は、日本を代表する「ものづくり」の研究機関と言えます。3000人以上の研究員を抱え、あらゆる技術を高いレベルで手掛けています。この産総研でも、近年は、顧客のサービスなどに新たな価値を生み出す「ことづくり」を目指す動きが出てきています。そうした取り組みについて、産総研の理事兼イノベーション推進本部長の瀬戸政宏さんに聞きます。瀬戸さんには、「ものこと双発学会」の理事として議論に参加いただいています(2月27日に東京飯田橋で開催される「ものこと双発学会 年次研究発表大会」の詳細はこちらから)。
田中:産業技術総合研究所(産総研)では、「もの」と「こと」、そして「ひと」づくりを連関させる取り組みである「日本を元気にする産業技術会議」を立ち上げています。その成果や現状をお聞かせください。

瀬戸:2015年4月から、第4期に入りました。産総研では近年、得意とする「もの」に関する研究を、どこまで社会の役に立つように実現できるかが課題となっています。その中で、日本を元気にする産業技術会議における議論が、外部の知見を活用しながら革新的な開発成果を挙げるオープンイノベーションを実現するための体制作りにも反映されてきました。
従来の「つくばイノベーションアリーナ」(産総研、物質・材料研究機構、筑波大学、高エネルギー加速器研究機構などによる微細加工関連の研究拠点)に加え、「福島再生可能エネルギー研究所」が活動をはじめ、さらに最近は、「臨海副都心センター」を国際的なオープンイノベーションの拠点に変え、人工知能、創薬、バイオ関連の先端的な技術を融合する拠点にしています。
また、企業との連携を深めるために、知的財産に関するルールを変えました。従来は、産総研が定めたルールに従う企業とだけ連携してきましたが、企業ごとの要望に応じる形に変えたのです。こうしたことから、2015年は2014年に比べて約20%、共同研究の件数が増えました。
今後は、人材育成が肝になると思っています。産総研における人材の課題の1つは、高齢化です。若い人材をいかに取り込めるかが勝負となります。まず、産総研に滞在して研究する大学院生やポスドク(博士研究員)の数を増やします。2014年に、大学院生などがつくばで年中滞在して研究できる体制を整え、その数が100人を超える規模になりました。2014年は約30人でした。ポスドクも増えつつあります。
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