「分かりません」という、若い社員の悲鳴は、こう言い換えられます。

 「情報がありません」

 そうか、情報だ。私たちの会社には、社員に情報を提供する仕組みがなかったのだ。これこそ一番の反省ポイントだ。

 そこで、情報公開に力を入れることにしました。本腰を入れたのは、社長就任から3年ほどたったころからです。

 そして2011年、新しい情報管理システムを導入しました。
 同業者からは冷ややかな視線を浴びました。何しろ合計1億円ほどかけました。
「それだけのお金を使って、どれほど効果が出るものですかね」というわけです。

 どうして、そんなにお金がかかったのかといえば、独自のシステムを組んだからです。

産廃の処理料金を査定するハンディターミナル。これも、独自開発したもの(写真:的野弘路)
 

 どこの会社のお客様が、何月何日の何時何分に、車両番号何番のトラックで、こういう廃棄物を、これだけ持ち込んだ。そのときの単価はいくらで、売り上げはいくら。これを処理した重機の稼働時間は、累計何時間。加えて、この日の何時何分、こんな故障で一時停止した。その重機を動かしていた社員は、何時に出勤して、何時に退勤。その分の残業手当はいくらになる……。

 そんな具合に、廃棄物の受け入れ状況から、会計管理や勤怠管理、トラブルの発生状況まで、会社で起きたことのすべてを把握できるシステムを、自前でつくりました。

 そこまでやらなくては、未経験の新人の「分かりません」の連呼を、封じ込めることはできない。そんな思いがありました。

「数字の公開」を、社員は歓迎しなかった

 要するに、「会社のすべての情報を公開する」と私は決めて、そのためのハードとソフトを整えたわけです。
 現場の状況や会社の業績を逐一把握できるのは、経営陣だけではありません。原則として社員全員です。そのために、競合他社があきれるほどの投資をしたわけです。

 創業者で、当時会長だった父は心配しました。
 お金のことではありません。
 「社員に売り上げや利益まで、すべて公開して大丈夫か」と。
 ごもっともです。だから、情報セキュリティーの国際規格であるISMS27001を取得しました。

 こうしてとうとう、新しい情報管理システムを本格導入して……。

 さあ、社員の皆さん、情報を公開しましたよ!ぜひ見てください!

 そう意気込んだのですが……。

 見たがる社員などほとんどいませんでした。

 

 社員に数字に基づいて考え、行動し、結果にこだわってほしい。
 そう思って、私は、数字を「見せた」。
 ところが、肝心の社員は、数字を「見ない」。

 経営者にしてみれば、社員に数字を見せるのは勇気の要ることですが、だからといって、思い切って公開しても、社員はさしてありがたがらない。それどころか関心すら持たない。情報公開に取り組んで、最初に直面した現実でした。

 

 情報漏えいの心配をしていたなんて、バカみたいです。