未経験者を優先して採用する代わりに、資格取得の支援制度を整備しました。重機の免許取得には、平均して10万円前後の費用がかかり、1週間ほどの講習を受ける必要があります。そこで、現場で2、3カ月ほど経験を積んだ新人については、免許取得の費用は全額、会社が負担し、講習期間は有給扱いにすることにしました。

 こうして、石坂産業の現場には、産廃業界を初めて知る若者が、どんどん増えていきました。

 そこでまた、頭を抱える事態が起きたのです。

石坂産業の産業廃棄物処理プラント。パワーショベルなど重機の取り扱いに慣れた社員が求められる(写真:的野弘路)

 新入りの現場社員が、次々に陳情にやってきました。

 「社長、あれが壊れた。直してくれ」
 「今度はこれの調子が悪い。調べてくれ」

 私の机に、重機の修理の見積書と請求書があふれます。お金のかかる話ばかりです。

 「えええっ! なんで? なんでそんなに壊れるのよ」

 そう私が尋ねても、「知りません」という、そっけない答え。

 「そもそも、この重機のこれまでの稼働時間は合計何時間?」

 そう尋ねても、やっぱり「知りません」。

 要するに「過去のことなど、私たちは知りません。そんなことは誰にも教えてもらっていないし、私たちに分かるのは、とにかく今、この機械が動かないという事実だけです」と、主張するわけです。

 そんなのは、言い訳なんじゃないかな。

 正直に明かせば、最初は、そう感じました。

社員の主張は「言い訳」ではなく、「現実」である

 彼らも、その壊れた重機を自分が「何日」動かしていたかは、だいたい把握しています。しかし、「合計何時間」となると、お手上げでした。そして、そこを押さえていないと、どのようなメンテナンスが必要なのかが、よく分かりません。

 そこはやはり、未経験の素人の弱さです。

 以前にいたベテランは、正確な数値までは把握していなくても、長年の勘で、それぞれの重機について、どのくらい老朽化していて、どのようなことに注意して動かすべきかを判断できていたようでした。だから、故障が続出することもなかった。

 半年間で、社員の4割が入れ替わった後、社員の平均年齢は55歳から35歳まで若返っていました。しかも素人ばかりです。石坂産業は、20年分の技能をごっそり失ったような状態でした。

 しかし、それは私自身が望み、選んだことです。

 とすれば、若い社員の「分かりません」の連呼も、見積書と請求書の山も、決して「言い訳」なんかではありません。彼らにとって、どうしようもない「現実」です。

 猛省して、対策を考え始めました。