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一方で、特に都心部では障がい者を雇用しようと思っても人員が不足しているという問題も出ています。人手不足はここでも深刻になりつつあります。

山下:障がい者の数は決して減っていないと思っています。特に、精神に障がいを持つ方は増えています。今は企業も精神に障がいを持つ方を雇用する方向で動いています。それから通勤が難しい重度な障がいを持つ方もまだまだたくさんいるはずです。テレワークなどを活用し、こういう方々にも仕事をしてもらうことを考えるべきです。

テレワークというと、これまで例えば営業の社員が会社に来なくても仕事ができるといったメリットが考えられていましたが、障がい者雇用においても新たな可能性があるということですね。確かにこれを突き詰めれば、障がい者雇用に関して、日本が世界を引っ張っていくこともできそうです。

山下:例えばテレワークを通して、現場にいるロボットを遠隔で操作する仕事などもできるのではないでしょうか。重度障がい者が遠隔操作でロボットを動かし、カフェの接客をするという実験も行われています。こういうことが実現すれば、障がい者の雇用はより幅が広がります。

太陽の家では、創設以来いろいろな障がい者を雇用してきました。対応する業種や業務の内容もずいぶん広がっていますね。

山下:そうですね。もともと太陽の家はものづくりが中心でしたが、83年に三菱商事と共同でIT(情報技術)関連の三菱商事太陽(大分県別府市)を設立するなど、時代に合わせて対応する業種を広げてきました。一般の企業も時代に合わせてものづくりからロボットへと事業を広げていったりします。それと同じでニーズに応える仕事を受けていくことが必要です。今後はオフィス業務を切り出してもらうことが重要だと思っています。

障がい者に特別なマネジメントはいらない

オフィス業務ですか。例えばどんな仕事ですか。

山下:要は総務系の仕事です。例えばデータ入力とか。清掃業務ももちろん悪くないけれど、そういう業務だけでは限られた一部の障がい者しか担当できません。官庁や役所には紙の資料がまだたくさんあります。それを電子媒体に置き換える仕事などを請け負えれば、もっとたくさんの障がい者を雇用できます。テレワークも増やせます。こういう業務の切り出しを進めていきたいですね。

そうすると、「いかに仕事を取ってくるか」が重要になりますね。これはなかなか簡単なことではないかもしれません。どういうアプローチが必要でしょうか。

山下:“太陽ファン”をつくることが必要だと思っています。我々もあと数年すれば退任です。次の世代につないでいかなくてはならない。創設者の中村裕を知る人間も少なくなりました。その中で、中村が誰のために、どういう信念でつくった組織なのかということを今いる人たちにも企業にも伝えていかないといけない。こういうことを理解していただければ、出せない仕事はないと思います。

 企業の方たちは「障がいのある人に何ができるのか」と不安に感じるかもしれませんが、障がいのない方が1人でやる仕事を障がいを持つ方が2人でやるとか、治工具や自助具を使うとか、そういう工夫をすればできないことはないはずです。

太陽の家は別府市のほか、大分県日出町、愛知県蒲郡市、京都市などに事業所を拡大し、従業員数は約1800人に及びます。そのうち障がいのある方は1100人ほど。障がいのない方も700人程度いるわけですが、この方たちはどういうきっかけからここで働くことになったのでしょうか。

山下:うーん、それは人それぞれだからなんとも言えないんですけど……。たぶん障がい者がいる会社だからうんぬんではなく、普通に入ってきているんだと思いますよ。事業所によっては半数以上が障がい者というところもありますので、障がいのない方は例えば「高い場所にあるモノを取って」と任されたりはするでしょうけれど。そんなに特別な思いは持っていないんじゃないかな。

一般に、日本の会社が障がい者の雇用を増やそうとしたら、どうしても障がいのない人のことを考えてしまうだろうと思うんです。やはり障がいのない方がマジョリティーですから。

山下:それはそうでしょうね。実際、企業の担当者から、「障がい者と健常者をどうマネジメントすればいいですか」と聞かれることがあります。