松田:経営者になったときに、わし、億になるとすごくおびえたんだな。何千万円単位の金は得意と言ったらおかしいけど、ええんじゃ。億になるとダメなんじゃ。億単位の金のときに、わしは何でこういうのにびびるのかなと思うくらいびびってしまった。微妙なカベみたいなのがあるんじゃろうね。

 わしが「億」にびびったのは、それまではやっぱり父親の世界だったっけぇ。

(オーナー代行として実質的にオーナーとしての仕事をしていた時期も)毎朝、銭のこととか言っておかないと、と思って、父親のところへ行くわけよ。それだけでいいんだ、私は安心するんだね。ちょっと話をするだけで精神的にはすごく落ち着いた。

父と弟の古い写真とともに

前オーナーの存在は大きいですね。

松田:(執務室に飾ってあるモノクロの写真を指して)これ、父親。大学の1年生くらいの頃かな。戦前に、セルフタイマーで撮った写真。いい写真だろう? 新しい写真は生々しいから、ぐさっと来るから、だから古い写真を置くんだ。古い写真で置いておくことによって、何というかな、そこにいるということかな。

(松田氏、携帯電話に着信。着信音はビートルズの『A Hard Day's Night』)

松田:これ(『A Hard Day's Night』)を着信音にしたのは、なんでこう働かないといけないのかと思うくらい働いた時期。ずいぶん前だ。

 今も、着信音で何となしにその頃のことを、ちょっと思い出したりして(笑)。

 

(松田オーナーへのインタビューは今回で終わります。
構成:片瀬京子、編集:日経トップリーダー

強力ライバルからの反撃、会社売却、起業、急成長、資金ショート、無理な上場、妻が呼吸停止、バブル破裂、株価急落、最大顧客の倒産、3度のレイオフ、上場廃止の危機――。壮絶すぎる実体験を通して著者が得た教訓は、あらゆる困難(ハード・シングス)に立ち向かう人に知恵と勇気を与える。

複雑で流動的な問題には、決まった対処法はない。困難から脱出するマニュアルもない。会社が失敗のどん底に落ち込んだときに、社員の士気を取り戻すためのマニュアルもない。ただし、こういう困難な経験から得られる教訓もあるし、有益な助言もあるのだ。本書は、シリコンバレーの経営者たちに慕われる最強投資家からのアドバイスだ。

「ビジネス書大賞2016」 大賞受賞
「ハーバード・ビジネス・レビュー読者が選ぶ ベスト経営書2015」第1位受賞、 「ITエンジニアに読んでほしい! ビジネス書大賞2016」特別賞を受賞


 また、松田元オーナーへのロングインビューなどを元に、広島東洋カープの復活劇をビジネスの面から分かりやすく振り返る書籍『広島カープがしぶとく愛される理由』を12月下旬に発売する予定です。ご期待ください。内容など詳しくはこちらをご覧ください。

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