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宮嶋:お客様の活用方法がどうであれ、実店舗はまず来ていただくこと自体がとても大変なことですし、それが最も重要なことなのです。今言ったようにショールームとして見に来てくれる人もいますし、私たちもテレビコマーシャルや折り込みチラシなど、多面的な手段を使って集客もします。

 そして、店舗に来ていただければそこでお客様とやり取りをするチャンスが生まれ、あとは販売スタッフの力量と言いますか、そこでお客様にどれだけご満足いただけるかになります。満足いただければ、購入やその後の来店につながるのです。接客はただ商品を説明するのではなく、お客様の困り事を伺って最適解を提案することが基本です。

 販売スタッフの心構えやスキルは、接客ロールプレイングの研修を実施したり、接客コンテストを開催したりして日頃から高めています。接客コンテストは毎年1回全国大会を開いています。予選を勝ち抜いて来る人材などは我が社の宝ですね。

 ちなみにネットだけで実店舗がないと、買うときはいいですけれども、不具合があったような場合、非常に手続きが面倒です。

 不具合のある商品を送り返し、また送ってもらうといった手間を掛けている間、その商品は使えません。それが炊飯器なら、しばらくご飯が炊けないわけです。店舗では人と直接やり取りでき、初期不良品であれば即日配達ですぐ代わりの商品を使えるといった安心感も実感していただいているはずです。

実店舗では、お客様に来てさえもらえれば、販売スタッフによる「お客様の困り事を解決する提案」という価値を提供できるという

2018年8月期、業績が好調でした。利益も大幅に伸びたとのこと。ECも伸びていると聞いていますが、ECを伸ばすと利益率は上がるのでしょうか。あるいは、利益はやはりコスト削減といった努力で捻出されているのでしょうか。

宮嶋:コスト削減についてはその通りです。需要予測をしながら、効率的な従業員の出勤体制を組んだり、バックオフィスでは機械化やシステム化を進めています。

 ECについては、これを伸ばせば利益率が上がるかというと、必ずしもそうではありません。それよりやはり今、旗艦店、セレクトショップ、ECが連携するオムニチャネルがうまくいっているな、と感じています。

 オムニチャネルの効果について具体的に言えば、お客様は皆さんスマートフォンをお持ちですが、ビックカメラのスマホアプリをダウンロードして登録していただいている方には、実際にその利便性による効果が出ていると思います。

 私たちのアプリ会員には、当社からタイムリーに情報を発信しています。何かを購入されたと分かったら、それにまつわる商品をお薦めしたり、「そろそろ買い換えはいかがですか」「クーポンを送ります」「新製品が出たのでお試しになりませんか」といったお声掛けをしているのです。

 これらの情報は、お客様の「店に行ってみよう」「ネットで買ってみよう」という動機につながっています。今、アプリ会員はすべて送料無料なので、ネットでの注文の敷居は相当低いと思います。

ビックカメラに行ったことがない女性は多い

商売は難しくなってきたとのことですが、今後、小売業にはどのような変化がありそうでしょうか。

宮嶋:今から10年前に今の状況を想像できたかというとできていませんでした。今も、メーカーさんとのやり取りの中から、省エネ家電がまだまだ進化しそうだとか、ミラーレスカメラが増えそうだという2、3年後までのトレンドは読めます。ですが10年後となるとなかなか読めません。インバウンドについてもそうです。

 今後の展開のことを考えて一つ言えることは、異業種などとの提携にはかなり将来性があるということです。当社のこれまでの提携が成功しているのがその証左です。

 06年にソフマップを、12年にコジマを子会社化しました。12年にはユニクロとコラボレーションした「ビックロ」も新宿駅東口にオープンさせています。営業スタイルや業種が違う店舗とのコラボレーションは、新しいお客様を確保できるという点で非常に効果があるのです。

 新宿駅の西口には、16年前に出店しているのですが、新宿には行くけれどビックカメラにはまだ一度も足を運んだことがなかったという女性が、ビックロに来ていただいたお客様の中に大勢いたことは驚きでした。