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2018年8月期に売上高が前年同期比6.8%増の8440億円、経常利益も同20%増の好調な経営状況を発表したビックカメラ。あらゆる販路やツールを使い売り上げを最大化させるオムニチャネルが成功しているという。大型店舗周辺に展開する小型店舗、異業種などとの企業提携、オリジナルアプリ普及の効果など、また今後の小売業の行方について同社社長、宮嶋宏幸氏に聞いた。

ビックカメラでは「ビックカメラセレクト」という小規模な店舗の展開を始めていますが、狙いは何ですか。

宮嶋:ビックカメラ全体の店舗戦略として、このスタイルの店舗を徹底的に強化していくということではありません。当社がオムニチャネルの最先端企業を目指す中での、一つのトライアルです。

 例えば東京の有楽町や池袋、新宿のように大型の旗艦店があるエリアには、ハブ・アンド・スポーク(中心拠点と拠点の連携)のような形があっていいと考えました。お客様に多様な場所でビックカメラとの接点を感じていただきたい。その一環です。

宮嶋宏幸(みやじま・ひろゆき)
株式会社ビックカメラ代表取締役社長・社長執行役員。1959年長野県上田市にあった菓子店に生まれる。84年、法政大学卒業後、大卒1期生でビックカメラに入社。渋谷東口店店長、取締役営業部長兼池袋本店店長、取締役営業本部長、専務取締役兼商品本部長等を歴任。2005年に、創業者・新井隆司氏の指名で二代目社長に就任、現在に至る(写真:山本祐之)

2017年11月に「ビックカメラセレクト原宿店」を開業しました。約1年間の営業状況をどのように評価されていますか。

宮嶋:一言で言えば順調です。

 もともとインバウンド向けの店舗として計画していたのですが、スペースに余裕がありましたので、ほかにも多彩な人気商品を置いてみようと、急きょお酒や化粧品、家電小物、それから使い方の説明や修理受付といったサービスもそろえて、セレクトという名称に変えて展開を始めたのです。

 東京近郊の町田市にもビックカメラセレクトがあります。神奈川県の湘南エリアの拠点都市である藤沢市や、さいたま市大宮区の店舗同様、7000m2ぐらいのスペースがあれば、また違った展開ができたと思いますが、町田ではアウトレット家電品やスポーツ品など、住宅街向けの品ぞろえをしています。

 名古屋近隣の日進市は若いファミリー層が多い地域なのですが、ここにある「プライムツリー赤池」というショッピングモールには、グループのコジマとビックカメラの複合店のほかにおもちゃの単独店「ビックトイズ」を初めて出店しました。ここも好調です。

実店舗はショールーム化しているが……

ビックカメラのオムニチャネルについて伺いたいと思いますが、例えば、店舗とECはどのように使い分けられていますか。

宮嶋:例えばペットボトルの水といった日用品、購入サイクルもある程度決まっている商品はネットで買うと便利だと思います。私たちの商品で言えば、プリンターのインクカートリッジや、DVD-Rのようなメディアがそうです。

 しかし、豊富な商品群の中から実際に試して選びたいもの、質感や色合い、音を確かめてから購入したい商品もあります。以前は、お客様から店舗やコールセンターへの電話は価格や在庫に関するお問い合わせが中心でしたが、今は商品の展示があるか、試せるかという内容が増えています。

 今、実店舗はショールーム化しているとも言われますが、それでいいのではないかと割り切っている面もあります。これも、店舗でしかできない機能として厳然として存在しているわけで、その価値は間違いなくあると思っています。

 店舗で商品を見ていただいて、その後、お客様はどこで購入されるか。そこはお客様に任せるしかありません。競合店舗もありますし、ネットもあります。その点で商売そのものは、確かに難しくなってきていると感じます。