ヒット商品の企画や販売も、詰まるところ社員の成長にかかっているということかもしれませんが、既に会社を大きくし、経営は軌道に乗ったのではないですか。

吉田:いえいえ、実情は失敗の連続です。この3期は連続で売り上げが大きく伸びたために、製造、物流にかなりしわ寄せが来ています。今も将来もそうなんですが、社員が成長しながら丁寧に仕事をして、しっかり結果を出して、会社も少しずつ成長するのが理想です。ここ2、3年は想定外の成長率だったので、自分の会社らしくない気がしています。

キャロットカンパニーではanelloの他、写真の女性向けバッグブランド「Legato Largo」なども展開している

 起業家の中には、何年後にこうなりたいから、今どのぐらい人を確保し、建物も大きな箱を用意する必要があると先手を打てる人もいますが、私はそれをしようと思いません。とりあえず、今の財布の中身でできるものをやります。もしそこでキャパシティーを超えるようなら少しずつ足す。足し算なんです。これまで無借金経営でやってきました。最初は誰もお金を貸してくれませんでしたし、借り方も分からなかったからでもあるのですが、入金があったらそれで仕入れて、という仕事の繰り返しです。急激には伸びないけれど、着実に伸ばしていきたいという考えです。競合も意識したことはありません。

 私がこの仕事を始めたとき、バブルは崩壊していました。父親の町工場も畳むことになって、そこで働いていた兄はキャロットカンパニーに入ってくれました。その頃からずっと、景気は悪い。少し盛り返してきたなと思ったらリーマンショックが来るといった状況でした。この仕事は、いつかものすごく急成長するというものではないと思っています。真面目にやっていくことこそが、強さになると思っています。私は荒っぽい商売は嫌いですから、丁寧に、それから人を信じて、今後もやっていきたいと思っています。

(この項終わり。構成:片瀬京子、編集:日経トップリーダー)