ただ後日、「店舗を盛り立てるのが本社の役割なのに、自分たちが優勝してどうする」と父に叱られ、以後、本社チームの参加はなくなってしまったという。

日本一、女性が働きたい職場

 黒田は社長になったとき、どんな会社にしたいかと人に問われて、思わず口をついて出たのが「日本一、女性が働きたい職場にすること」だった。今は東横インのビジョンの1つに掲げている。

 「東横インではたくさんの女性社員が活躍している。職場は温かい家庭の延長でありたい。そんな温かい職場づくりができるのも女性ならでは。日本一、女性が働きたい職場が実現できれば、東横インはこれからも安泰のはず」

 経営陣に加わったばかりの頃の苦い経験を教訓に、社長になってから始めたのは支配人との個人面談だ。年に1回、全国に100人以上いる支配人とフェース・ツー・フェースで話す。

支配人が集まる会議では意見が活発に飛び交う。支配人の97%が女性(写真:菊池一郎)
支配人が集まる会議では意見が活発に飛び交う。支配人の97%が女性(写真:菊池一郎)

 「カリスマ的にぐいぐい社員を引っ張ってきた父と違って、私は経験も知識もまだまだ足りない。私にまずできることといえば、支配人たちの声を聞くこと。1人につき20分が一応の目安だが、場合によっては30分、1時間近く話すこともある。それも大切な時間だと思う」

 そんな黒田の姿勢について、川崎駅前市役所通店で支配人を務める中村白雪(さゆき)は、「私のためだけに時間をつくってくれるのがうれしい。真剣に話を聞いてもらえる上、前回の面談で話したことまで覚えていて感激した」と話す。

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