大幸薬品は、伝統型の会社からサイエンス型の会社にシフトしているように見えます。

柴田:大幸薬品は、ないと困る製品を作り続け、ないと困る会社を目指しています。これは、オリジナリティーを追求すること、価値を追究すること、それから私の座右の銘でもある真理の探究を行うことです。

 なぜこうなるのかという疑問が生じたとき、見逃さずに目を向けて探究をする。そうすると、家庭薬や伝統薬に、薬効やエビデンスが見つかる可能性があります。

 今、科学的に設計図を書いて、これにはこの薬が効くだろうと合成し、いざ治験を行ったら副作用が強すぎるという例がいくつもあります。むしろ市場原理の中で消え去った過去の薬の中に、大きな宝があるように思います。

ところで、柴田社長が大幸薬品に入社した当時、社内の雰囲気はどのように目に映りましたか。

柴田:正露丸を作ってテレビコマーシャルさえすればどんどん売れる時代で、人の入れ替わりもない、安定的な会社でした。ですから、私が何か新しいことをしようとするとたいていの人は「ダメだろう」と言いました。何せ、正露丸以外で利益が出たことがなかったわけですから。そこで私が主体的に動いて、新しい商品が売れ出したら、みんな、目の色が変わりました。

 それから、会社を次のフェーズに持っていくには、上場が大きなベンチマークになります。

 病院は縦割りで、看護師は医師の直接の部下ではありません。ですから、いろいろな軋轢があります。ところが、病院機能評価という外部機関によるチェックがあると、急に協力的になります。

 企業が上場するのは、外部審査が入ることですから、意識が変わります。言ってみれば上場は、会社のお受験です。それを目指すようになれば受験勉強をするようになり、それまでの慣習はまかり通らなくなり、レベルが上がります。

医師になることはゴールではない

医師と経営者に共通点はありますか。

柴田:臨床は人の心と向き合いますし、我々の製品は最終的に顧客の心に訴えかけますし、いかにその心を察知して満足度を上げるかという点は、診療に似ています。また、経営判断は、研究開発の意思決定、問題解決のプロセスと同じです。

日本では医師による起業がまだまだ少ない状況です。

柴田:それは、勉強ができるから医者を目指すという人が多いからです。ゴールが医者になることで、その後、思考停止になる。臨床研修指導医をやっていた頃、研修医に「これから何をするんですか?」と聞いても、答えられる人はなかなかいませんでした。しかし、公務員であれば50歳前後で、自分で選択しなくてはならない場面がやってきます。ですからその前に、目指すのは教授なのか、院長なのか、開業医なのか、研究者なのか、起業なのか、考えておきなさいと話しました。

 私は幸いなことに、医者になる前から大幸薬品のことを考えていましたから、方向転換をしてもそこそこ回っているという感じです。(後編に続く)

(構成:片瀬京子、編集:日経トップリーダー

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