なぜ、正露丸は効くのですか。

柴田:薬理効果としては、身体の中の塩を外に出さないというものがあります。コレラや赤痢にかかって下痢の原因となる物質や病原体が身体の中に入ると、過剰反応が起こり、身体から塩が出て、脱水になって死に至ります。木クレオソートには、その排出のバルブを閉める作用があります。下痢に効くというのは、腸の中の水分をよく吸収するからです。それで、便が硬くなる。

 歴史をひもとくと、日露戦争のとき、行軍に際して健康な大人に1日3回、1粒ずつ正露丸を飲ませています。こうすると、少ない水筒の水で何キロも歩けて、脱落者が少なかったのです。今でも、暑くなって汗をかいて水分を取りきれないと脱水になりますが、こういうときもちょっと飲んでいただければ、次に起こる病気を予防できる可能性があります。

 こういったことを示すデータを提出できていなかったので、日本薬局方でも化学物質扱いされて、誤解されていました。それは海外での販売の大きな障壁にもなっていたので、医薬品医療機器総合機構(PDMA)に出向いて、これは天然の木から採った生薬に近いものだとお話をして、書類を提出して、2年前の2014年に正式に生薬となりました。

正露丸は中国、台湾、マレーシアなど海外展開にも力を入れる
正露丸は中国、台湾、マレーシアなど海外展開にも力を入れる

正露丸の海外展開にも力を入れる

 ただ、まだまだ正露丸には「飲むと腸内細菌が死ぬ」などという誤解があり、払拭されていませんので、今後も正露丸の価値を、科学的に検証して上乗せしていきます。情報を正確に伝えれば、市場活性化の可能性は十分にありますし、日本の人口が減っても、アジアや北米など、海外市場を伸ばすことはできます。

海外展開について教えてください。

柴田:現在、中国大陸、香港、台湾、マレーシア、ベトナム、タイ、韓国、それから米国とカナダでレギュレーション(規制)に則って輸出販売しており、中国大陸と香港でかなり売れています。ただ、本格的なマーケティングなどは始めていません。20年ほど前に挑戦したのですが、製品が高すぎるということで失敗しました。なのでもう一度優先順位を決めて、海外提携を進めていきたいと思っています。

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