今後、PPP(官民パートナーシップ)を推進していくうえで、どのようなソリューションを提案していくのか、お考えがあれば教えてください。
中村:PPPを成功させることは簡単でないと前回言いました。
これは、PPPの最初のP、自治体がもはやインフラに投資しづらいという問題のほかにも、自治体には、地理や、都市と地方などの様相の違いによって個々の事情があるからです。もう1つのP、企業についても、そこには多くの同業者が関係しているため課題を複雑化させています。
PPPを成功させるためのキーワードは3つあると思っています。
1つは「レジリエンス」、しなやかな回復力、強じん性という言い方もしますが、竹が厚く積もった雪をはねのけて育つようなイメージです。これは東日本大震災という悲しい体験から得た示唆であり、世界に発信すべきことだとも思っています。
これまでエンジニアは、絶対に壊れない、何があってもバックアップが稼働して大事にはならないシステムができると考えていたと思います。私もそう思っていました。しかし、自然を相手にすることは、そんなに容易なものではないと私たちは知りました。
私たちは考え方を変えなくてはいけないと思っています。

メタウォーター代表取締役社長。1957年埼玉県生まれ。81年、青山学院大理工学部卒、富士電機製造(現富士電機)入社。水処理システム開発などを担当。2008年、メタウォーター取締役、15年取締役執行役員常務。16年から現職。メタウォーターは、2008年、日本ガイシと富士電機の各水環境事業子会社の合併により、水・環境分野における総合エンジニアリング企業として発足。中村氏はその3代目社長。上下水道をIT(情報技術)で管理する新規事業などで実績がある(写真:清水真帆呂)
建造や改修が簡単なことも今後はメリットに
「3匹の子豚」という童話がありますよね。長男は簡単に作れるワラの、次男もほどほど簡単に作れる木の、三男は必死にレンガの家を作って三男だけがオオカミから命を守ったという物語です。ですが、地震の多い国であればレンガの家も壊れます。
レジリエンスの観点でこの物語を見直したらどうなるか。
ワラの家は、簡単に作ったり直したりできるメリットを生かし、何があってもすぐに復旧できる設備として捉え直すことができます。オオカミ対策として、警備会社と契約するというリスクヘッジも可能です。
振り返ると、自治体などのお客様に対して、ワラの家の提案はしてきませんでした。ワラの家ならではの付帯的サービスの提案もしてきませんでした。ですが今後は、このような考えから導き出されるアイデアも取り組むべきだと考えています。
ワラの家には警備会社との契約が必要であるのと同じように、設備には維持管理をする人の力が不可欠です。設備は、完成し稼働すると、その後のパフォーマンスは老朽化によって落ちていきます。そこをカバーするのが人です。
設備の老朽化によって、例えば水の処理量が減るのなら、人の熟練の化学的スキルなどによって水の処理量を増やし、結果として量を保つというソリューションがあります。
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