中村:先ほどCPSについて触れましたが、当社はこの構築そのものを手掛けるわけではありません。ただ、CPSで水に関することを扱いたいとなったとき、当社はその事業に参画するパートナーとして選んでいただける存在でありたい。

 言い換えれば、当社が、水・環境インフラのあらゆるデータを確実に蓄積していくことで、お客様がこれらのデータを使いたいときに、まずは当社と組みたいという状況にしておくことが、重要と考えています。

 今はまだあらゆるデータを蓄積、利用する際に困難なこともあります。例えば埼玉県で雨が降った場合、茨城県でどのような管理計画を立てるべきかとなると、県が違うためにデータの受け渡しが簡単ではないのが実情です。

インフラ管理は「広域化」へ

これからのインフラの運営手法として、公と民が連携するPPPが注目されています。

中村:実はPPPを事業として軌道に乗せるのはそう簡単ではありません。

 今、上下水道は存続の危機にあります。高度経済成長期に造られた上下水道設備が多いのですが、これらは老朽化が進んでおり、更新が必要な時期を迎えています。ところが、少子高齢化が進んだことで人手は不足するし、税収が上がらず自治体の財政も厳しくなり投資できないのです。

 異常気象と言うべき天候も続いています。例えば、局地的な豪雨があちこちで観測されています。設備のキャパシティーを超えるほどの雨が降り、本来なら下水処理場で処理すべき汚水が、下水処理場を通過してしまうようなケースも見られます。

 このように、上下水道事業の継続を困難にする課題が顕在化しています。個々の自治体では、もはや水処理設備を維持管理できなくなりつつありますから、国や自治体は、まず幾つかの自治体が共同で水を管理する「広域化」を進めようと言っています。

メタウォーターは既に多くのPPPに携わっている。写真は「フィッシャリーサポートおながわ」。同社が代表企業を務めるSPC(特別目的会社)が、2015年から宮城県女川町の水産加工団地の排水処理を行っている
メタウォーターは既に多くのPPPに携わっている。写真は「フィッシャリーサポートおながわ」。同社が代表企業を務めるSPC(特別目的会社)が、2015年から宮城県女川町の水産加工団地の排水処理を行っている

 こうした事業環境の変化を受け、私たちも施策を進めています。

 具体的には3つのセンター、私たちが携わっている地域を中心に「運転員訓練センター」「共通部品センター」「ナレッジセンター」を設置し、これまで以上に事業の運営が効率的にできる体制を整えつつあります。

 それぞれ、地域の運転員を教育する拠点、必要部品を共有し調達しやすくする拠点、知識の共有により運用効率改善を図る拠点となるものです。

 これらの拠点づくりは、上下水道の広域化をにらんだ施策で、私たちがPPPを推進するうえで、重要な施策の1つとなります。

(後編に続く。後編の掲載は11月9日の予定です。構成:片瀬京子、
編集:日経BP総研 中堅・中小企業ラボ

アジア進出、デジタル対応、新規事業
2019年1月から「中堅企業 成長戦略勉強会」を開催

日経BP総研 中堅・中小企業ラボでは、2020年以降も成長を目指したい中堅企業の皆様を対象に、2019年1月から「中堅企業 成長戦略勉強会」を始めます。

中堅企業の経営幹部の皆様に少人数でお集まりいただき、講師と参加者が共に議論できる学びの場をご用意いたします。勉強会のテーマは「アジア進出」「デジタル化&生産性向上」「新規事業創出」の3つです。

「アジア進出」の講師は、マンダム、森永製菓での約30年にわたる海外担当の経験を持つ山下充洋氏が務めます。自ら体験した事例などをふまえ、具体的な海外進出のコツをお話しいただきます。

「デジタル化&生産性向上」の講師は、日経BP総研 クリーンテックラボの三好敏が務めます。電機、半導体などを長く取材し、いち早く「インダストリー4.0」の潮流に着目した三好が、IoT(モノのインターネット)やデジタル化による事業革新について参加者とともに議論を深めていきます。

「新規事業創出」の講師は、書籍『起業の科学 スタートアップサイエンス』の著者で、数々のスタートアップのメンターも務める田所雅之氏にお願いしました。「破壊的イノベーション」を生み出す発想の型を参加者とともに考えていきます。

皆様のご参加をお待ちしております。

中堅企業 成長戦略勉強会の詳細、お申し込みは下記のURLをご参照ください。

https://project.nikkeibp.co.jp/event/chuken/

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