現在、「WBC(ウォータービジネスクラウド)」と呼ばれているサービスですね。当時は、かなり先進的な取り組みだったということでしょうか。

中村:当時は、ソフトウエアをお客様にダイレクトに売るには、今で言うプライベートクラウド(自社専用クラウド)のような商品展開をすることになるだろうと思っていました。

 その後、クラウドを利用するビジネス環境が急速に整いましたので、自社サーバーを使うよりもリソースの拡張も簡単でセキュリティーにも優れ、上下水道に関わる企業や自治体などがデータを共有することもできるクラウドで提供できることになりました。

メタウォーターの「WBC」は、水・環境インフラの事業運営に役立つサービスをコンテンツとしてクラウド上に置き、複数の事業運営者でシェアして利用できる

今では、水処理設備の管理にもITが便利に活用されているということだと思いますが、今後、インフラのIT化はどのように発展していくとお考えですか。

中村:今や、水処理の現場でもIoT(モノのインターネット)によって、設備や装置の管理データなどがどんどん蓄積されています。既に、そのデータをAI(人工知能)が処理するという動きも始まっています。

 今後は、AIによってサイバー・フィジカル・システム(CPS:Cyber-Physical System。現実世界<フィジカル空間>でのセンサーネットワークが生み出す膨大な観測データなどをクラウド<サイバー空間>で分析、現実世界にフィードバックするシステム)が構築されるでしょう。

 これまで、多くの事象について人が「経験と勘」を頼りに解析、結果を導き出していました。CPSができれば、様々な分野の事象が自動的に解析され、必要なときに分かりやすい形で結果が提供される社会になると思っています。

水・環境インフラのあらゆるデータを確実に蓄積

 例えば水処理の分野でしたら、AIがある地域にこれから雨が降ると認知して、時間とともに変化する雨量や雨水の流れ方を予測し、設備に流れ込む水流を制御する幾つもの水門をどこからどの順に閉めるべきかといった高度な判断と指示を自動的に出してくれる、というイメージです。

 私たちのシステムも、こうした動きに合わせて進化させていく必要があると思っています。

 IoTは今後、インターネット・オブ・エクスペリエンス(IoX: Internet of Experience)へとシフトしていくと思います。IoXはまだ定義されていない言葉ですが、何事もモノからコトへという流れがあったのですから、モノのインターネットもコトのインターネットへという流れが出てくると思います。

 私たちの業界でのIoXは何かと言えば、人が感じる「熱い」「臭い」「ちょっとおかしい」といった、IoTだけではなかなか拾えない違和感をデータベース化し、設備や装置の運用に役立てること、となるでしょう。実際に今、当社でもこの取り組みを始めています。

 SNS(交流サイト)では、ユーザーのタイムラインを見ると、過去にどのような発言をしていたかが一覧できますね。それと同じように、点検対象となる装置などにタイムラインを持たせ、「いつ点検があった」「ここがおかしい」といった記録を後から人が、見た目にも参照しやすくするというシステムです。