水・環境分野のエンジニアリング企業大手、メタウォーター。連結で約1100億円を売り上げる堅実経営の企業だが、日本が人口減少社会を迎え、同社の事業環境は厳しくなりつつある。今後は上下水道設備などインフラの新設や更新に大きな期待を懸けられないばかりか、事業の維持さえ困難な地域も出てくるという。今後インフラ関連企業はどうなるのか。前編では、同社が進めるIT活用、PPP(官民パートナーシップ)への取り組みなどについて聞いた。

メタウォーターは、2008年に日本ガイシと富士電機、それぞれの水環境事業子会社が合併して生まれた会社と聞いていますが、中村社長は、もともとどのような仕事をされていたのですか。

中村:私は技術者として、富士電機で放射線を用いた計測器を作る仕事に15年ほど携わっていました。

 その後、2000年頃から管理職として、水処理技術や関連する設備・装置の仕事に関わり、07年に富士電機水環境システムズに移りました。08年のメタウォーターの設立時には、電機周りの技術を取りまとめる取締役として着任しました。

中村靖(なかむら・やすし)
メタウォーター代表取締役社長。1957年埼玉県生まれ。81年、青山学院大理工学部卒、富士電機製造(現富士電機)入社。水処理システム開発などを担当。2008年、メタウォーター取締役、15年取締役執行役員常務。16年から現職。メタウォーターは、2008年、日本ガイシと富士電機の各水環境事業子会社の合併により、水・環境分野における総合エンジニアリング企業として発足。中村氏はその3代目社長。上下水道をIT(情報技術)で管理する新規事業などで実績がある(写真:清水真帆呂)

 社長に就任したのは16年ですが、それまでに水処理や資源環境の設備・装置の開発・設計と、設備の運転・維持管理、メンテナンスする両部門を経験しました。

 それぞれ、考え方も文化も異なる部門です。開発部門は予算が大きく、何か設備が完成すれば達成感を得やすい。一方、オペレーションとメンテナンスの仕事は地味ですが、お客様から直接、喜びや感謝の声を頂ける仕事です。

 半面、設備を開発する側は、自分勝手になりやすいところがあります。自分の知的興味を満たすために設計を変えてしまうような性質です。

 片やオペレーションとメンテナンスの現場では、粛々と仕事をしますが、開発側にその経験をフィードバックしないような面があります。「設備のここをもう少し変えてくれれば自分たちの仕事がしやすくなるのだけれど」などと思っていても、なかなか言いません。

 両部門には、それぞれに良いところと課題があったというわけです。両方を知ることで、その違いを知り、経営改善のヒントを得られたのはいい経験だったと思います。

インフラ企業もモノからコトへ

中村:当社が設立されて間もない08~09年頃、世間では、これからの商品は“モノからコトへ”変わると盛んに言われていました。

 私たちはずっとモノを売ってきていましたから、このままではいけない、私たちも少しでもコトを売っていこうと考えるようになりました。その一つの形がクラウドでのサービスです。

 私たちがどのようなモノを売っていたかと言うと、例えば水処理設備の監視制御に使うサーバーとコンピューター、ソフトウエアですと専用設計のシステムだったんです。これに対して、クラウドでのサービスは、お客様が使いたいデバイスを活用していただけます。つまり、ハードウエア込みのモノではなく、機能=コトを売る方向へ転換できるのです。

 クラウドシステムが出来上がった11年当時、私たちの業界では、どの会社も始めていなかった取り組みでしたので、「これなら大きなニュースになる」とその後のビジネスの展開に期待していました。大々的に発表してスタートを切ろうという意気込みでした。

 ところが、東日本大震災が起こり、それどころではなくなりました。残念な思いもありましたが、実はこのとき、津波などでデータが失われる様子を目の当たりにして、データをクラウド上で管理する意義があり、このサービスは必要なものだと実感しました。