佐藤さんは地元・静岡で財務を中心として若手経営者向けの塾を開いていますね。最近、彼らにはどのようなアドバイスをしていますか。
佐藤:会社を変えろと言っています。日本の中小企業はほとんどが日本だけでビジネスをしています。ということは、日本がもしデフォルトをしたら、仕事は100%なくなるということです。
そこまではいかなくても、日本は高齢化が進み、労働人口が減っているのですから、もう国内市場に成長の余地はありません。昭和30年代のような高度成長もありません。ですから、自分たちはどういった業界でどういった商売をしていくかを選ばなくてはいけません。儲かるものを選ばなくてはなりません。

(写真・廣瀬貴礼、以下同)
中小企業は変わらねばならない
市場が成長していれば、儲からない仕事が多少あってもいいのです。総利益率が30%の会社には、35%の仕事もあるし、25%の仕事もあっていいという意味です。ただ、成長しない時代には、何が儲かって何が儲からないのかをすべて洗い出し、35%儲かっているところに人・モノ・カネをすべてつぎ込むべきです。でも売り上げが下がるので、それを恐れる経営者が多いのです。
その発想は変えなくてはなりません。先日、ライオンの濱逸夫社長の話を聞く機会がありました。濱さんは、ライオンが花王に勝つのは大変難しいと言っていました。後で調べてみたら、利益に10倍くらいの開きがあり、圧倒的に花王が強いのです。
もしもライオンが花王に勝って日本の家庭用品メーカーのトップに立ったとしても、世界を見ると、そこにはP&Gやジョンソン・エンド・ジョンソンがいます。それに勝つのは、花王に勝つより難しいでしょう。トップに立てないと分かっていて、商売をする。これはとても大変なことです。
うちも、プリンターで言えばエプソンさんがいて、そこには勝てない。ただ、ライオンは花王に勝てないという濱さんの話を、私はトップと同じ土俵に乗らないことだと受け止めました。これは大きなヒントになりました。それに、ライオンという大企業のトップでも危機感を持っていて、会社を変えていこうとしていることにも感心しました。ライオンは歯ブラシを売っていますが、あれをすべて日本で作って例えば東南アジアで売ったら、運送料だけで利益が吹き飛びます。ですから、地産地消なんですね。そうやって会社を変えてきています。
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