時間管理システムやパーキングシステム、集塵機等を製造販売するアマノ。同社は2017年に第7次中期経営計画をスタートした。陣頭指揮を執る同社新社長、津田博之氏は、AIなどを活用したイノベーションの創出で競合に打ち勝ち、ナンバーワン領域を広げていくという。
社長就任から数カ月経ちました。ご自身では何が一番変わりましたか。
津田:正式には6月の株主総会後からでしたが、社内的には4月から社長業をやってきました。まず、話をする機会が増えましたね。3カ月に1度の全社朝礼などでも、間違った話はできません、分かりやすく話さないとなりませんから、そこは神経を使います。
今、会社では社長としてどのようなことを話されているのですか。
津田:大きくは3つほどあります。まず、全員が創造的な仕事をしようと言っています。ですがそれは簡単なことではありませんから、昨日より今日、今日より明日と少しずつ改善し続けていこうと伝えています。小事は大事。小さなミス、小さなクレームをおろそかにすると大きなしっぺ返しを食らいます。小さなことを徹底しないと大きな仕事はできません。
もう一つは、リーダーとメンバーの役割と課題を明確にし、互いにコミュニケーションをとって進捗度合いを測ることです。小事は大事と言いましたが、メンバーが過不足なく報告を上げるということも簡単ではありません。ですから、リーダー側が小さな変化を見付け、状況を把握しておく必要があるということを話しています。
つだ・ひろゆき
アマノ社長。1960年滋賀県生まれ。82年立命館大学経営学部経営学科卒業後、アマノ入社。群馬県の高崎支店を皮切りに京都支店、大阪支店、東京支店で営業に従事。その後、関東営業本部長兼大宮支店長、執行役員中部営業本部長、アマノマネジメントサービス社長等を歴任、2017年6月から現職。(写真:山本祐之)
コラボでも革新的価値の創造を目指す
今年4月から、目指す第7次中期経営計画も始まっています。
津田:「100年企業へのセカンドステージ、さらなる飛躍、持続成長のための革新的価値創造」をテーマに、3年後の2020年3月期、売上高1400億円以上、営業利益160億円以上を目標としています。
ここでは「トリプル11」と銘打ち、営業利益率11%以上、ROE(自己資本利益率)11%以上、売上高連単倍率11%伸長も目指します。これらの目標数字を達成するには、コンプライアンス、コーポレートガバナンス強化をベースに、4つの戦略である「エリア別成長戦略」「経営基盤の強化」「イノベーション創出」「ブランド力向上」をやり切ることが必要だと考えています。
津田:「エリア別成長戦略」とは日本、北米、欧州、アジアの4極で、それぞれのエリアにあった戦略を立案実行することで、例えばアジアなら、韓国、香港、マレーシアを中心に駐車場の管理運営受託事業を伸ばしたい。北米なら、北米・中米の自動車関連企業から集塵機の受注を拡大するといった施策を打っていきます。
アマノは、日本を含めそれぞれのエリアで得意な事業を伸ばしていく「エリア別成長戦略」を打ち出した
一方でこうした事業規模の拡大を支える骨太、筋肉質の組織をつくろうという戦略が「経営基盤の強化」です。売り上げを5%アップ、原価を5%ダウン、経費を5%ダウンさせようとする「トリプル5」に挑戦します。「イノベーションの創出」は当社の価値をもっと高めたいという戦略。「ブランド力向上」では、マスメディアやソーシャルメディアを使って、アマノファンを増やし、業績の相乗効果を狙います。
これら4つのうち、最も力を入れたいと考えている戦略はどれになりますか。
津田:どれも重要ですが、あえて言うならイノベーションの創出です。既にベンチャー企業と連携しながらオープンイノベーションを進めています。
例えば、AIやビッグデータ解析を使った商品やサービス。駐車場のシステムで言えば、クルマが駐車場から出るときに、どの出口が一番空いているか分かるとか、「ラグタイム」を自動で調整するといったことが考えられます。当社で言うラグタイムとは、例えば買い物をすれば1時間は駐車無料というとき、出口が混んでいると1時間を超えてしまう可能性がありますよね、そのような余分な時間のことです。その場合に、混んでいることを機械側で考慮して精算するんです。スマートフォンで近くの駐車場を予約できる仕組みなども、ベンチャーとのコラボで進めていきます。
ちなみに2020年に東京五輪がありますから不動産業界は活況で、ビルができれば駐車場・駐輪場ができ、この分野のチャンスは大きいと思っています。そのうちクルマの自動運転の時代がやってきますから、そのときには駐車場への駐車も自動化されることになるでしょう。
ナンバーワン領域を増やす
津田:イノベーションの創出では、ナンバーワン領域を増やすことも目指しています。現在は、駐車場ではナンバーワンでも、駐輪場ではそうではありません。就業ソフトではナンバーワンでも、給与ソフトではそうではありません。大きな革新的価値を創造して、ナンバーワンを目指します。
とはおっしゃっても、ナンバーワンでない領域をナンバーワンにするのは簡単ではないですよね。
津田:確かに簡単なことではありませんが、全社一丸となってチャレンジしていきます。競合企業に足りないところをきっちりカバーできれば、お客様には当社の製品を買っていただけるはずだ、という自信もあります。
働き方改革の最初のステップは可視化
ところで世の中では、働き方改革が話題になっています。労務管理を支える事業を展開する御社には引き合いが増えているのではないでしょうか。
津田:そうですね。おかげさまでお話を頂くケースが増えています。働き方改革とは、単に残業時間を減らすのではなく、一人ひとりの生産性を上げ、働きがいを増やし、ワーク・ライフ・バランスを実現することだと思っています。そのためには、従業員の働き方の現状分析が必要です。時間管理ができていないところでは我々のツールを使っていただきたいですし、時間のデータを取るだけでなく、それをどう生かすかもお手伝いしたいと思っています。
働き方の現状分析では、どこの部署の残業が多いのかをタイムリーに可視化し、要因を突き止める必要があります。残業が多いのはそこにいる人のスキルが足りていないからだとか、健康状態や家族に不安があって仕事に集中できない人がいるからという理由も考えられます。そこまで含めて、人事的にも見る必要があるのです。こういったつながりは、就業ソフトと人事ソフトを連携させればよりよく分かるようになります。さらに給与ソフトとも連携させれば、評価ともつなげられます。
ニーズを素早くつかみ製品に反映させる
集塵機や清掃ロボットの事業についても、製造業などの働き方改革につながるところもありそうですが、これらのイノベーションはどうなりそうですか。
津田:集塵機は稼働状況、フィルターの状況、ゴミの量をデータで把握できるようになれば、さらに普及が進むと考えています。国内では、目に見えるほこりやちりがある現場は減っていますが、目に見えない、小さなほこりを嫌う現場は多くあります。
清掃ロボットについては家庭用が普及してきていますし、業界は人手不足で困っていますから、業務用も広がっていくと考えています。集塵機同様、稼働状況が遠方からも分かるようになればますます使い勝手が良くなるでしょう。もっと言いますと、環境変化と言って、業務の現場では机の位置が昨日とは少しずれているようなことがあります。そういう場合でも、きちんと掃除ができるような技術を盛り込もうとしています。ただ、まだコストは高くつきますね。
清掃ロボットは家庭用が普及しつつある。今後は業務用も、より高機能化し、どこでも見られるようになるかもしれない
最後に複数の事業に共通する御社の強みを教えてください。
津田:使っていただいているお客様の数が多いこと、それから、それぞれの商品の開発設計、製造、販売、保守、メンテナンス、それから受託を全てアマノグループで対応できることです。ですから、お客様から新たなニーズが生まれたとき、それをスピーディーに製品に反映させ、新たにお客様が望む形に仕上げられるのです。どの事業でもこれは共通しています。
(この項終わり。構成:片瀬京子、編集:日経トップリーダー)
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