ほかの新規事業はいかがですか。

田中:海外事業以外にも、精力的に複数進めています。

 不動産投資をしてみたい個人の方が投資しやすいよう、不動産を小口化し、匿名組合型(出資者が匿名で事業社側の資産として出資、配当を受ける形態)の商品として「ARISTO(アリスト)」というブランドで販売し始めました。

 第1号商品は京都の新京極通りにある商業ビルを投資対象物件とする「ARISTO京都」です。富裕層は、いわゆる資産家や成功している企業経営者たちが多いのですが、もっと広く不動産投資を勧めたいと考えています。不動産投資をされていない富裕層の方にとっても投資しやすいと思います。

 ただ、不動産は流動性が低いため、現金化が難しいという側面があります。

 そこで2016年にスマートマネー・インベストメントという会社を立ち上げました。セカンダリーマーケット(流通市場)のためのプラットフォームを目指しています。例えば、もともとは7年経ったら売却するはずだった物件を、5年で手放す必要が出てきた場合、マーケットがあれば売り主も安心できます。

連携の可能性を考慮しベンチャーを誘致

 不動産とテクノロジーを融合する領域も新規事業です。

 「AD-O渋谷道玄坂」というビルを自社開発し自社運用しています。このビルの2Fは、通常の賃貸対象とせず、将来有望な“不動産テック”事業者に活用してもらう「AD-O Tech Lab」として運営を開始しました。ここには、家賃を共益費相当にして、入居者を公募したんです。

<span class="fontBold">田中 秀夫(たなか・ひでお)</span><br /> 1950年生まれ。千葉県船橋市出身。73年、慶應義塾大学商学部卒業後、西武不動産入社。不動産鑑定士の資格を取得後、91年に独立し、田中不動産事務所を開業。92年、ハウスポート西洋(現みずほ不動産販売)入社。93年、大学時代の親友が継ぐはずだった青木染工場(現エー・ディー・ワークス)に入社し、同年、取締役不動産部長に就任。95年に会社を譲り受けてから現職。社名も現社名に変更した。(写真:山本祐之)
田中 秀夫(たなか・ひでお)
1950年生まれ。千葉県船橋市出身。73年、慶應義塾大学商学部卒業後、西武不動産入社。不動産鑑定士の資格を取得後、91年に独立し、田中不動産事務所を開業。92年、ハウスポート西洋(現みずほ不動産販売)入社。93年、大学時代の親友が継ぐはずだった青木染工場(現エー・ディー・ワークス)に入社し、同年、取締役不動産部長に就任。95年に会社を譲り受けてから現職。社名も現社名に変更した。(写真:山本祐之)

 入居したいという企業の成長や、当社とのコラボレーションの可能性を考慮して、GFL(東京・渋谷)、クラウド・インベストメント(東京・渋谷)、プリンシプル(福岡市博多区)の3社に、2018年の6月から入居してもらいました。

 それぞれ、AI(人工知能)を活用した不動産などのレコメンデーション、クラウドファンディングのプラットフォーム開発、月々ワンコインから使えるホームセキュリティーサービスなどIoT(モノのインターネット)サービスを手掛けている会社です。クラウド・インベストメントとは、既に包括的な業務提携契約を結びました。

 私たちは、彼らともコラボしながら、不動産免許を持つテクノロジー企業を目指します。18年の正月に社員に対してそう宣言しました。この宣言は、投資家、そして株主の皆さんへの宣言でもあります。

 今後は、収益不動産の事業を続けながら、テクノロジーを活用し、不動産ほど投資を必要とせず利益を上げられる事業も手掛けていきたいと考えています。例えば、クラウドファンディングに象徴される金融業です。不動産とお金は表裏一体ですし、いい物件は金融化できます。

(この項終わり。
構成:片瀬京子、編集:日経BP総研 中堅・中小企業ラボ)

 日経BP総研 中堅・中小企業ラボでは、2020年以降も成長を目指したい中堅企業の皆様を対象に、2019年1月から「中堅企業 成長戦略勉強会」を始めます。

 中堅企業のトップ、経営幹部の皆様に、関心あるテーマごとにお集まりいただき、講師と参加者が共に学び合う場をご用意いたします。勉強会のテーマは「アジア進出」「デジタル化&生産性向上」「新規事業創出」の3つです。

 この勉強会で、何が得られ、自社をどのように強化できるのか、勉強会の概要をご理解いただくための「中堅企業 成長戦略キックオフセミナー」を10月12日(金)に東京・秋葉原で開催します。

 基調講演は、東洋大学教授・慶応義塾大学名誉教授の竹中平蔵氏。これからを勝ち抜く経営者の視点についてお話しいただきます。また、勉強会の3つのテーマを担当する講師3人も登壇します。

 本セミナーの参加は無料です。自社を変えたいと考える中堅企業経営者・幹部の皆様、ふるってのご参加をお待ちしております。

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