━━そうして集めた情報は日本に集約し、日本で開発されるんですか。

坂田:研究開発に関しては、基本は静岡県掛川市にある研究センターで世界10カ所、国内5カ所の研究農場のコントロールをしています。従って、育種プログラム、育種目標といったことは全部、そこが把握している。研究開発は、それぞれの農場で行っています。現地の環境下で選抜をしていかないとその土地に合ったものができませんから。

 例えばブラジルの農場では、現地マーケットに特化したカボチャやメロンなどの育種をしています。グローカルな取り組みというのは、やはり時間がかかります。人にもよりますから、信頼できるローカルスタッフをいかに集められるか、という点が重要です。

品種の開発は人材が命

日本の会社は全般に、そこはあまり得意じゃないですね。

坂田:そうですね。例えばうちは今、インドだけで180人ほどのスタッフを揃えています。多言語国家のインドは公用語も多数あるわけですが、その一つひとつに対応した人材を揃えられるかというと、とても難しい。我々の場合は特に、最終的にはどうしても現場の畑に行って話さなくちゃいけないわけで、言語的・地域的に全土をカバーしようと思うと、なかなか大変です。

 世界的な市場動向という点もありますが、重要なのはやはり人ですね。品種の開発には10年から15年はかかりますから、研究開発の人材が持つ先見性は非常に重要です。加えて、新しい品種を作っただけでは商売として成り立たない。品種を作ったら、それを販売する種を安定的に採取して供給しなければならないわけです。しかも、品質管理をしっかりする。この販売に至るまでのライン全般でいい人材を確保できるかどうか。ここがポイントになります。

 技術がいくら進歩しても、最終的にはやはり人がやることですから。しかも、畑でやることですからね。実験室だけで新しい品種はできませんので、やはり地に着いた研究というのがどうしても不可欠になります。

(構成:曲沼美恵 編集:日経トップリーダー

靴下専門店の全国チェーン「靴下屋」を一代で築いたタビオ創業者、越智直正氏の人生訓。15歳で丁稚奉公を始めてから60年、国産靴下に懸ける尋常ならざる熱情を語り、経営の王道を説く。『靴下バカ一代』は好評販売中です。詳しくはこちらから。