田中:何年か続けて実績ができると、西武グループのファイナンス会社から少しお金を借りられるようになりました。

 そこで、仲介をしていく中で出合った安価な不動産や、お客様が急いで売りたがっている不動産を買い、売ることもできるようになり、売り上げが伸びてきました。これを機に、競売にも参入しました。法改正もあり、一般の不動産事業者も参加しやすくなったのです。

 鑑定と仲介の仕事は経験を積んできましたので、当社なら物件の本当の価値を判断できると考えました。当時は取引事例比較法だけを用いての鑑定が一般的でした。つまり、過去の取引価格を参考にするだけで、物件の収益性は一切問われなかったのです。

 そこで当社なりに、このアパートは収益が上がるなと判断できれば、比較的高額で入札します。すると落札できる。これは面白いし、実際に見込んだ通りの利益も得られます。当社の収益不動産ビジネスの始まりがこれですね。

 もちろん苦労もあります。私が新しいオーナーになったと、買い取ったアパートに住んでいる方との契約を結び直したり、空室ばかりの物件なら、外装などをきれいに直したりと大変です。

 とはいえ、やはり利益率は高いのです。一戸建ての空き家を買った場合は、売るのが遅くなればなるほど損失が膨らみますが、アパートの場合は、保有している間、家賃収入が得られますから、売るのが遅くなれば遅くなるほど、儲かるケースも少なくありません。

 アパートを運用して10%ほどの利回りを得られた時期は、借金をして物件を落札し、そこで得た家賃収入でリニューアルして売るということを繰り返しました。

 こうした仕事ができたのは、鑑定と仲介の仕事の経験を積んできたことと、景気が低迷していて金融機関からお金を借りるのが難しい時期だったからだと思います。もしもバブル崩壊前にこの会社に入っていたら、どんどん借金をして、その後、多くの同業者と共に市場から消えていっていたと思います。

収益不動産は別に競売で買わなくてもいい

収益性を重視して競売物件を落札しようと考える会社はほかにはなかったのですか。

田中:最初はいませんでした。

 話は少し戻りますが、競売で古いアパートを落札し、リフォームして売り出すとします。それが戸建てなら、その物件がある半径500mほどの範囲にチラシをまけば、今の家を狭いと感じているので買いたいという人が出てきます。売りやすいという点では一戸建てのほうがメリットがありました。アパートの場合はそうはいきません。販売ルートがなかったのです。

 その後、アパートのオーナーを見つけやすい特定の地域に配布するチラシに情報を載せてくれる事業者が見つかり、この事業者のチラシを利用したら売れるようになったんです。すると今度は新規参入が相次いで、競合が増え、競売価格が上がっていきます。

エー・ディー・ワークスは、米国の物件も取り扱っている。写真は、ロサンゼルス郊外の物件をリノベーションした「Eucalyptus Apartments」の例
エー・ディー・ワークスは、米国の物件も取り扱っている。写真は、ロサンゼルス郊外の物件をリノベーションした「Eucalyptus Apartments」の例
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