利益率が高く、売り上げの伸びも大きい。誰もが望む、そんな会社はどうすればつくれるのか。33期連続増収、利益率20%超の会計事務所、古田土(こだと)会計(東京・江戸川)は独自の経営計画書を基に中小企業の体質改善を指南している。後編では、古田土満代表が経営計画書の活用方法を語る。
(前回の記事はこちら

 前回、経営計画書の重要性を指摘しました。では、具体的にどんな使い方をすればいいのかということをお話しします。

 例えば、利益についての考え方です。

 利益は、全社員が知恵を出し合って得るものです。元佐賀大学学長の上原春男氏はその著書『成長の原理』で、「企業の利益は、企業における創造性の総和である」と、ずばり言い表しています。

 会計的には、売り上げから経費を引いたものが利益です。けれど経営的には、利益は単なる差額ではありません。会計士の私がこんなことを言うのは変かもしれませんが、利益を出すことは美しい行為と捉えるべきでしょう。

 
古田土満(こだと・みつる)氏。1952年生まれ。83年、東京・江戸川で古田土公認会計士税理士事務所(現古田土会計)を開業。「古田土式・経営計画書」を武器に、経営指導と会計指導を両展開。約2100社の中小企業を顧客に抱える(写真:鈴木愛子)
古田土満(こだと・みつる)氏。1952年生まれ。83年、東京・江戸川で古田土公認会計士税理士事務所(現古田土会計)を開業。「古田土式・経営計画書」を武器に、経営指導と会計指導を両展開。約2100社の中小企業を顧客に抱える(写真:鈴木愛子)

 古田土会計の経営計画書にはこう書いています。

 「利益とは、社員と家族を守るためのコストであり、会社存続のための事業存続費である」「利益を出すことは美しいこと。全社員の努力と知恵のたまもの。正しく、誠実に商売して利益を出すことは誇りである」

 利益は美しく、社員の生活を守る原資なのです。十分に内部留保がなかったら、会社が不測の事態で損害賠償を余儀なくされたり、天変地異で営業停止になったりしたとき、社員を守れません。

 経営計画書に書く、というのがポイントです。聞くだけでは忘れたり、人によって解釈が違ったりします。利益の定義や意味を社内文書に明記し、利益を出すことの美しさ、大切さを社員にしっかり理解してもらうのです。そうすれば、社員は利益を増やそうと自ら創意工夫をします。

利益を出すことはやましくない。余ったものでもない

 利益の意味を理解していないと「利益は全部分配してほしい」と考える社員が出てくるかもしれません。利益は余ったもの、と誤解している社員は多いのです。

 経営者の中にも、利益がたくさん出そうな場合、節税に走る人がいますが、それでは「利益を出すことはやましい」と言っているようなものです。そんな会社に、社員は誇りを持てるでしょうか。

 税金を払わなければ内部留保は増えず、社員を守ることもできません。正当に利益を出すことがいかに美しく、大切なことか、その点を改めて見つめ直すことが、高収益体質をつくる第一歩です。

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