家電エコポイント制度が終了し、地上デジタル放送に完全移行した11年7月以降は、主力商品だったテレビ市場が大幅に縮小。2年連続で減収減益に陥る中、明が突如宣言した。

 結果を出さなければ、会社の顔である明が辞める。ジャパネットたかたにとっては大ピンチだ。旭人の肩の荷はますます重くなった。

 だが、旭人はこう考えた。「いずれ父は会社を去る。ちょうどいい練習の機会だ」。

 まずとった戦術は、徹底的に明の“ものまね”をすることだった。東京スタジオでは、初めて明の手を借りずにテレビ通販番組を制作したが、思うように結果が出ない。これまでダントツの実績を上げてきた明の話ぶりを分析し、ポイントを取り入れてみても、成果にはつながらなかった。そこで旭人のアイデアで、明のものまねをすることにした。それも完全なコピーだ。

 明の商品紹介の映像を見ながら、「セリフ、動き、間などを別の話し手が完全にまねる。繰り返すうち、少しずつ結果が出た」。東京テレビ企画制作部ゼネラルマネジャー、氏田いずみはそう話す。

 もう1つの戦術は、父に頼らず自分たちの成功体験をつくることだ。その最たるものが「チャレンジデー」だ。1日限定、特別価格で1商品だけを集中的に紹介するという企画で、この発案者も旭人だ。

 当初、明は「大量の在庫が残ったらどうする。絶対にうまくいくはずがない」と猛反対。最終的にしぶしぶ認めさせる形でスタートしたところ、これが大成功を収めた。「めったに褒めない父が『これほどの成果が出せると思わなかった。素晴らしい。ジャパネットの歴史に残るんじゃないか』と言葉をかけてくれました」。

社長交代の記者会見。明は会長など一切の役職に就かなかった(写真/菊池一郎)
社長交代の記者会見。明は会長など一切の役職に就かなかった(写真/菊池一郎)

 ジャパネットたかた29回目の創立記念日である15年1月16日、旭人は晴れて社長に就任。30年という節目を待たないところが明らしい。「私が残っていたら新社長も、社員もやりにくいだろう」と、明はきっぱり身を退いた。16年1月を最後にテレビ通販番組への出演もやめた。明の完全引退が、円滑な事業承継の最大の要因であることは間違いない。

社員に意志を持たせる

 街を歩く際の注目度では依然として明に勝てないと笑うが、旭人は既に明ができなかった様々な改革を実施している。

 その1つが、商品の絞り込みだ。8500種類ほどあった取扱商品を、約600種類まで減らした。合わせて全商品の「45秒紹介動画」を通販サイトで公開。少品種多量販売をより徹底し、価格や物流、アフターフォローなどのサービス向上につなげる。

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