熱心なお客様から指摘されカイゼンも
槇:「大袖振豆もち」も当社にとってはエポックメーキングな商品でした。これは、水切り製法と言って、包丁に水を付けながら柔らかい餅をスライスして作るのですが、その工程をいち早く自動化したのです。これによって全国に出荷できるようになりましたし、品質の良いものができるようになりました。
水切り製法は、豆もちをおかきにするための自動化を考えていたんですね。
槇:そうです。ちなみに大袖振大豆の産地は、北海道十勝の音更です。今はもう、そこでしか採れません。豆もちを自動化して大量におかきにする技術もそうですが、豆もちの大豆が大粒で甘みが強く、それがもちとフィットしたこともヒットの大きな要因です。
ただ、大袖振大豆は他の大豆と違って背丈の低いところになるので、収穫が機械化できず、また単位面積当たりの収穫量も低いので、輸入大豆の5倍くらいの価格です。ですが、当社では40年近く、ずっとこの大豆を使って作っています。この大豆を作ってくれている農家の方が毎年、当社の工場に見学に来られますが、もしうちがなかったら、もうこの品種は日本からなくなっていたでしょうと言われます。
実はこの商品については、以前、品質について熱心なお客様から指摘されたことがあります。このおかきを作る際、柔らかい餅を木枠に押し付ける工程があるのですが、その押し方が安定していないと、焼き上がりに変化が出てきます。その変化を敏感に感じ取られた方が、1週間ごとに2カ月分くらいの商品をわざわざ送ってきてくれたんです。我々もそれを見て、製造現場で調べて、微妙なのですがおかしいところが分かりました。それはすぐに直しました。お客様は正直だなと思いました。

他にも、均一に大きな黒豆を埋め込み、それが落ちてしまわない技術なども工夫してきました。2006年には、夢だったR&D・Mセンターを開設しました。研究開発は命であり、心臓ですから、いい環境のところできちんと製品開発をしたいと思ってきました。
(後編に続く。後編の掲載は9月15日の予定です。構成:片瀬京子、編集:日経トップリーダー)
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