2017年になって語学学習ソフトの「ロゼッタストーン」の日本法人を買収し、もともと5、6万円する製品を4980円で発売しましたね。
松田:ここには、日本人の「言葉の壁をなくす」というミッションがあります。日本人の言語が世界で通じないことはさまざまな障害になっていますから、この課題にはずっと取り組みたいと思っていましたし、これまでにも取り組んできました。
人はなぜ、なかなか語学の学習をやらないのか、アンケートを取りました。すると、1番はお金が掛かる、2番は時間がない、ということでした。まず1つ目の課題を解決するため、ロゼッタストーンを思い切った安い価格にすることにしました。今後は製品のラインアップを増やして、さらに言葉の壁をなくしていきたい。これが創業21年目のミッションです。
12年に米国法人を設立し、松田社長もシリコンバレーに居住地を移されました。どのような狙いがあってのことなのでしょうか。
松田:米国で誕生した新しい製品やサービスに触れるにつれ、どうやら私は向こうにいたほうがいいな、と思ったのです。日本IBMにいたときに、日本法人にはほとんど権限がない分、米国本社へ出向けば圧倒的に取引が進むという経験もしていましたし、住んでいるのと出張していくのとでは全く違うという話も聞いていました。

松田:ただ、当社は上場企業でもあり、日本での経営が立ちゆかなくなっては困ります。一般的には、シリコンバレーには英語が堪能なナンバー2やナンバー3の人材を送り込むのでしょう。ですが、シリコンバレーに何人もいるファウンダー(創業者)の、ビジネスをけん引する力の大きさや、取引の即断ができることを現地で目の当たりにすると、ファウンダーかつ社長である私が米国に行き、これまで十何年も一緒にやってきた仲間に日本側を任せるほうが自然だと思うようになりました。
シリコンバレーへ行けば、世界のあらゆる企業と取り引きできる
松田:そこで5年前に米国法人をつくったのです。今、シリコンバレーに住んでいる日本の上場企業の社長は恐らく私だけだと思います。
住んでみて分かったことは、日本の中心が東京であるのと同じように、ITの世界の中心はシリコンバレーにあるということです。北海道や九州に本社のある企業も、東京支店があるのと同様、ドイツやルーマニアの企業も、シリコンバレーに支店があるのが普通です。つまりシリコンバレーへ行けば、世界のあらゆる企業と取引ができます。シリコンバレー以外に本社がある会社のCEO(最高経営責任者)クラスも、年に何度かはシリコンバレーにやってきます。青い空の下で、彼らと気持ちよく商談できます。ロゼッタストーン・ジャパンや「筆まめ」の買収もシリコンバレーで得た人とのつながりが大きなきっかけになりました。
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